「宇田川源流」 3月5日からの中国全人代で李強首相が選任とその先の暗雲

「宇田川源流」 3月5日からの中国全人代で李強首相が選任とその先の暗雲

中国で「政権交代」が行われた。このように書くと「不正確である」ということを言われるのであるが、実際には、政権のトップである習近平国家主席の所は全く変わらないのであるが、その周辺と言っては変であるが、常務委員や国務院のメンバーが据えて変わった。「政権」という言葉を何をもっていうのかということによって異なる解釈になるのであるが、実際には「政権交代といってよいほど、それまでの中国共産党の合議制的な政治から、習近平国家主席の独裁的な政治に変わると見られている」政権人事になったということになる。

中国の政治は、共産党という政党が一党独裁で、その正当における「委員会」が基本政策を決める機能がある。そのうえで、その下部組織である「政府」がその内容を実行する。日本の政治で言えば、「政治家が選ばれる大臣=共産党委員会」という感じであり、「実行組織としての官僚=政府(国務院・省政府・市政府など)」というような感じになる。もちろんそんなに単純ではない。何しろその両方の人事権を共産党が握っているのであるし、政府の上の人々がその後に共産党の委員長になるということも十分にある。日本の政治家と官僚のように分離しているのではなく、その中の人事でどちらになるのかということが決まってゆくのである。

国家レベルの「政府」が国務院である。国務院総理を日本の総理大臣とするような報道がほとんどであるが、ある意味で、「委員会」を「国会」と見た場合には、そのような感じになる。日本の政治組織に例えようという方が無理なので、その内容をイメージとして考えていただければよい。もちろん「国務院総理」は、そのまま日本の総理大臣と同義であるということになるが、実際に「行政権」ではなく「共産党の委員会で決めたことの執行権」しかないということになるということになる。その辺は微妙に違うのであるが、日本のマスコミが意識して、誤解を与えるように日本の政治と混同させる書き方をしているのか、あるいは本当にわかっていないのか、あるいは、問い合わせが来たらしっかりと解説をするのかはわからないが、そのようなことになっている。

その国務院総理が交代した。

習氏と握手も目合わず… 首相退任の李克強氏、すれ違いにじませ去る

 中国・北京で開かれている全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で11日、党序列2位の李強(リーチアン)氏が新首相に選出され、2期10年にわたって首相を務めてきた李克強(リーコーチアン)氏は退任した。李克強氏は習近平(シーチンピン)国家主席と握手こそ交わしたが、目が合うことはなく、距離感をにじませたまま表舞台を去った。

 同日午前11時ごろ、習氏の指名に基づき李強氏が首相に選出された。李強氏は隣の習氏と約10秒間握手。2人は笑顔で向かい合い、一言二言言葉を交わした。習氏側近の李強氏は、前日の全体会議でも習氏と話し込む姿が見られた。

 このあと、首相を退任する李克強氏も習氏と握手を交わした。習氏ははじめ、穏やかな表情で李克強氏を見たが、李克強氏は真顔で正面を向いたままだった。逆に李克強氏が習氏の方を向いた際に習氏は正面を見ていて、すれ違った。

3/11(土) 朝日新聞デジタル

https://news.yahoo.co.jp/pickup/6456699

中国全人代、李強氏を新首相に選出 習氏側近、「経験不足」の指摘も

 中国の全国人民代表大会(全人代)は11日、新たな首相に李強(リーチアン)・共産党政治局常務委員(63)を選出した。

 習近平(シーチンピン)指導部のナンバー2として政府部門を率いる。米中対立の激化や人口減少など中国は難局を迎えており、李氏の行政手腕が問われることになる。

 全人代はこの日午前、全体会議を開催。習氏が李氏を首相に指名し、約3千人の代表(議員)の投票を経て選出された。これまで首相を務めていた李克強(リーコーチアン)氏は正式に退任した。

 李強氏は浙江省出身で、習氏が同省トップの書記だったころ秘書役で仕えた。その後、江蘇省と上海市の書記を経験し、昨年秋の共産党大会を経て最高指導部の党政治局常務委員に習氏に次ぐ序列2位で加わった。習氏の強い意向があったとみられている。

 李氏は中央での行政経験がない。副首相経験のない首相は、初代首相の周恩来を除き初めてで、経験不足を指摘する意見もある。

 李氏は全人代が閉幕する13日、首相として初めての記者会見に臨む。国内外メディアの質問に応じる予定で、発言に注目が集まる。

 今回の全人代ではすでに、習氏の国家主席としての3選を決めた。12日には新たな副首相や国務委員、閣僚などの人事を決める。(北京=高田正幸)

2023年3月11日 12時2分 朝日新聞デジタル

https://news.livedoor.com/article/detail/23852645/

 今まで10年間は李克強が国務院総理となっていた。習近平が国家主席になるときに、同様に李克強が鳴るのではないかと言われた人物であり、なおかつ、共産党青年団という官僚組織の幹部であって、習近平が暴走するときのブレーキ役であるとされていた。

変なことを言うが、中国の政治というのは、「共産党という政党による独裁」であり、なおかつその法律の構成として、法律は出来ている者の、執行規則や細則ができていないということがあり、そのことから、運用をするときになると、権限者の所に賄賂が集中するというような形になってしまうのである。しかし、原則の所、つまり意思決定は一応「合議制」なのである。

 その合議制において行う中において、全員が一定の方向にいては、合議制の意味をなさない。語彙卯木生徒は異なる立場の人間が入り、そのそれぞれの立場においての話をするから何とかなるのである。それができない場合には、結局中心人物の独裁になってしまう。つまり「政党による一党独裁」から「習近平個人による独裁」が始まってしまうということになるのである。

そもそも、習近平政権ができたときに、「太子党」と言われる文化大革命の元勲の子孫と、「共産党青年団」と言われる官僚組織、そして「上海閥」といわれる鄧小平の南巡講話以降の市場主義経済の人々が入っていた。しかし、習近平派この上海閥を乗っ取る形で習近平派というものを作り、そのうえで、太子党を「反腐敗」でそのほとんどを排除したのである。そのように考えれば、習近平派を押しとどめるのは共産党青年団だけであったのだが、しかし、今回の人事でそのほとんどが排除されてしまい、そのうえで、共産党青年団と習近平派の一騎打ちになっていたのである。

そのようなときに、太子党・上海閥の古い方の力の主である江沢民が死去し、結局太子党が崩壊する形になる、そのようなときに昨年10月の五中全会で人事が決まり常務委員にも中央政治局にも全てにおいて習近平派で占められてしまった。

つまり、今回の人事は習近平派が独裁するということになったのであり、そのうえで共産党青年団が排除されたということになる。

その象徴的なところが「共産党青年団」の李克強から、「習近平の秘書」であった李強に変わったということであろう。

この政権がどうなるのか、なかなか興味深いが、しかし、それは注意深く見なければ、日本に直接の影響が出てくることになるのだ。

宇田川源流

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