「宇田川源流」【大河ドラマ 鎌倉殿の13人】 尼将軍の誕生を阿野時元の反乱と結び付けた脚本のすばらしさ

「宇田川源流」【大河ドラマ 鎌倉殿の13人】 尼将軍の誕生を阿野時元の反乱と結び付けた脚本のすばらしさ


 毎週水曜日は、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」について書いている。もう、今回で46回になるので、全48回であるという事は、あと2回でおわりとなる。そろそろ、最終回つまり、主人公の北条義時の死に方などが気になって来ることであるが、なかなか面白い所ではないのか。

さて今回は「阿野時元の反乱と、政子が尼将軍になるまで」ということが書かれている。阿野時元は、源頼朝の弟阿野全成と実衣(阿波局)の間の子供で、頼朝系の源氏の血筋で最後の男である。実際に、源頼朝は、自分の手で自分の信頼できるはずの弟である源義経、そして源範頼を殺してしまっている。その後頼朝の子供の二代将軍頼家は、暗殺されている。吾妻鏡では風呂で暗殺されたことになっており、ドラマでは猿楽を呼んだ時に善児に殺されたことになっている。

その子供である一幡は、比企の乱の後に殺されている。吾妻鏡では比企の屋敷で自害することになっているようである。そしてもう一人の子供である公暁は、三代将軍源実朝を殺し、京都に逃げる途中で三浦義村によって殺されている。阿野全成の子供はその前に、京都で忙殺されているので、最後に残ったのがこの時元ということになる。

実際に、阿野時元が本当に反乱を起こしたのかどうかは不明だ。既に源氏の世から北条の世の中に移行してしまっているときに、源氏の世に流れを戻そうとする勢力があっても、それはよほど大きな力でなければ、うまくゆかないのである。

このドラマは、平家から関東豪族の集合体へと勢力が移動し、その次に豪族集合体から源氏に、そして源氏から、比企と北条の争いの後に北条に権力が移動する。その権力の移動の度に、人が殺されてゆくということになる。殺された数だけ権力が移動し、その権力が北条家に集中して言っているということになるのではないか。その流れに逆らうものが殺されてゆく。もちろん、北条義時の初めの妻八重のように、事故死(文献では自殺)もあるが、そのような話がどれくらい出てきているのかということになるのではないか。

三谷幸喜氏のすごい所は、そのような「人の死」と「次のストーリー」を常につなぎ合わせて、そして「史実の内容とつじつまを合わせているところ」ではないか。

NHK「鎌倉殿の13人」 〝尼将軍〟政子誕生…その理由に視聴者感動「三谷脚本の愛」「シナリオすげえー!!」

 小栗旬が伊豆の弱小豪族から鎌倉幕府二代執権に上り詰めた北条義時の生涯を演じるNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜後8・0)の第46回が4日、放送された。ついに政子(小池栄子)が〝尼将軍〟を名乗るが、そのストーリー展開に視聴者からは脚本を務める三谷幸喜氏に称賛の声が上がった。

★「鎌倉殿の13人」第46回「将軍になった女」あらすじ

新たな鎌倉殿を迎えようと朝廷に伺いを立てる北条義時(小栗旬)、大江広元(栗原英雄)たち。実衣(宮澤エマ)が野心を燃やし、三浦義村(山本耕史)が暗躍する中、京では鎌倉への不信感をさらに高めた後鳥羽上皇(尾上松也)が、藤原兼子(シルビア・グラブ)、慈円(山寺宏一)と共に今後を見据え、鎌倉への圧力を強めていく。

 一方北条家では、思い悩む泰時(坂口健太郎)をよそに、のえ(菊地凛子)が愛息・政村(新原泰佑)を…という展開だった。

 今回の話では、実衣が義時と義村の計略にはまってしまい、息子・阿野時元の謀反に関わったとして処罰を受けることに。処罰が決まるまでは部屋に閉じ込められることとなったが、義時は死罪が相当と訴えた。政子は窮地に追いやられた妹・実衣を救うために奔走。ラストではついに「私が鎌倉殿の代わりになりましょう」と〝尼将軍〟を名乗り、執権である義時でも刃向かえない力を得ると、手始めに実衣を救出。閉じ込められていた妹を優しく抱くと「みんないなくなっちゃった。 とうとう2人きり。支え合ってまいりましょう昔みたいに」と語り掛け、2人で「ボンタラクーソワカー」と大姫(南沙良)に教わったまじないを一緒に唱えるのだった。

 政子が〝尼将軍〟となるまでの流れに視聴者は「妹のか細い『死にたくない』の本音の一言が、知恵と度胸はあれど表に出たくないと願い続けた女の背中を、最後の一押しで蹴った…」「いよいよ実衣がどうにもならない状況に追い詰められた際に、その命を救うために政子が自ら望んで『尼将軍』という立場と権力を受け入れるというシナリオ、すげえーーーー!!」「伊豆の豪族の行き遅れだった娘が、稀代の悪女と呼ばれる尼将軍になった経緯が、鎌倉の為、民の為、更に奥深いところにある『たった一人になってしまった妹の為』という政子の情深さを示す三谷脚本の愛…」「尼将軍誕生の理由を姉の優しさに帰結させる見事な脚本」などと三谷氏の脚本に感心する声がツイッター上で上がっていた。

 大河ドラマ通算61作目となる「鎌倉殿の13人」は、「新選組!」「真田丸」に続いて大河3作目となる三谷幸喜氏が脚本を手掛ける。タイトルの「鎌倉殿」は「源頼朝」、「13人」は「源頼朝の死後、合議制で政治を動かした家臣の人数」を意味する。俳優、小栗旬が大河初主演し、義時は裏切りや権謀術数の渦巻く中、やがては最高の実権を握るダーティーヒーローとして描かれる。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士としての頂点に上り詰めたのか。語りは女優の長澤まさみが担当する。

2022/12/05 08:47 サンスポ

https://www.sanspo.com/article/20221205-UIWJDYR4ENHLZBONRTCYCNVTZA/

 上記のような人の死に方を見ていれば、今回の内容がみえてくるのではないか。まずは平家から関東豪族に移る第一段階には「大庭景親」などが死んだ。これは、多くの人が「適役」であることから、当然に見えていた内容ではないか。それでも木曽義高や木曽義仲等、死ぬことを惜しまれた人も少なくない。

次に、関東豪族から源頼朝に集中するときには、源義経、上総広常、源範頼などが殺されている。これは、「源頼朝」に権力が集中する中で、「源頼朝に対抗しうる力を持った人」ということになったのではないか。もちろんドラマではもっと悲しい結末のように書いたが、実際には権力関係にはそのようになっており、それを大江広元がうまくアドバイスしていた。

頼朝の死後、頼家の時代になると、頼家シンパと元々の頼朝の豪族集合体という対立が起きる。その中で梶原景時や比企能員が死ぬことになる。このころから「後鳥羽上皇」このころは、そこまで固有名詞ではなく「京」という言い方になるが、まさに、「鎌倉権力」に対して「京都の権威」の戦いになり、鎌倉の組織からはみ出した人が、後鳥羽上皇方に就こうとして途中で殺される状況になる。源頼家も、京都から猿楽を呼んでその中で暗殺されるのだ。要するにこのころから「京都と鎌倉の対立」ということを描いていたということになろう。

その内容から、源実朝の代になり、実朝が和田合戦で和田義盛を失い、そのうえで「京都に近づいた」ということから、公暁に狙われている源実朝をわざと「見て見ぬふりをして見殺しにした北条義時」ということになる。このころになると、源仲章などが出てきて、京都と鎌倉の対立が大きくなる。その対立と、対立をしない勢力である北条時房や泰時という人々と、明確にk鎌倉を守るために対立を覚悟し、最終的には戦争まで覚悟している北条義時との対立が明確化する。この辺で源頼朝以降の伏線が回収されるのである。

そのような中で「家族を守る」という事から政子の尼将軍に繋げるのは、「北条政子だけは、違う論理で生きていた」ということを示す最も大きな内容ではないか。鎌倉や組織を守り、京都との対立をも恐れない北条義時と、姉で「常に北条の家族や一族を守る」という立場で動いていた政子。その「北条を守る」と「鎌倉の武士の世の中を守る」という論理が合致した時に、京都との対立になりそれが承久の乱になるという見事な脚本になっている。そのことから、実衣は助かり、そして京都との対立が明確化することになるのである、

ストーリーの組み立てと伏線の改修があまりにも見事で、気付いている人も少ないのではないか。何回も見直して、見える内容なのかもしれない。

宇田川源流

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