「宇田川源流」【大河ドラマ 鎌倉殿の13人】 源仲章と北条義時の暗闘と源実朝

「宇田川源流」【大河ドラマ 鎌倉殿の13人】 源仲章と北条義時の暗闘と源実朝


 毎週水曜日は、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」について、好き勝手書いている。今週は、実朝暗殺の全多といううか当日の暗殺直前までの話ということになる。全48回の44回であるから、もう後半もよいところである。ある意味でクライマックスの始まりを体験しているのに違いない。

 京都から出てきた源仲章がまたなかなか開演でいい味出している。生田斗真産の演技は、ある意味で「嫌味な京都人が鎌倉の武士を馬鹿にしている態度」がよく見えていて、その馬鹿にした態度の内容を北条義時が一身に受けている。そして京都にあこがれる源実朝がそこに取り込まれてゆくという心理をうまく引き出しているのではないか。

 そもそも源仲章とはどんな人物なのであろうか。

 仲章は、「源氏」であっても「宇多源氏」であって、頼朝や実朝などの「清和源氏」とは異なる。父・光遠も後白河院近臣として院判官代を務めるなど、院近臣の家に生まれて後鳥羽上皇に仕えるが、早くから鎌倉幕府にも通じて在京のまま御家人としての資格を得る。そして、建仁3年(1203年)には阿野全成の三男・頼全を処刑している。

 しかし、その後自分は何もしていないかのような何食わぬ顔をして鎌倉に下向。実朝の教育係になる。実朝から気に入られた仲章は将軍の御所の近くに邸宅を与えられた。その一方で、廷臣としての地位も保持して、時折上洛して後鳥羽上皇に幕府内部の情報を伝えるなど、今日で言うところの二重スパイの役目を果たした。

 ちなみに宇多源氏の一族としては近江の佐々木氏が揚げらえる。これの後になって承久の乱のときに活躍し、出雲・隠岐の守護となり出雲佐々木氏の祖となるのである。

 さて、ドラマでは実朝が、公暁と「源氏に取り戻す」ということを言い、また源仲章が京都の意向を受けながら鎌倉を混乱させる。それに対して坂東武士の世の中をつくるとした北条義時が対抗しているということではないか。ある意味で、「清和源氏(将軍:鎌倉殿)」「宇多源氏(公家:後鳥羽上皇派)」「北条(鎌倉坂東武者)」というような対立構造が見え、源氏というだけで実朝が仲章の手の上で踊っている姿が見えてくるのではないか。

 このような見方をすると、下記の記事のように北条義時が闇落ちしたなどというような感想にはならないのである。

【鎌倉殿の13人】地獄展開!実朝暗殺の企て知っていた義時に「もう鎌倉殿を見捨ててる」「見るの怖い」

 俳優の小栗旬が鎌倉時代の第2代執権・北条義時を演じるNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜・後8時)の第44回「審判の日」が20日、放送された。ネット上では、“ダーク化”が加速する義時に様々な反応が見受けられた。(以下、ネタバレがあります。ご注意ください)

 後鳥羽上皇(尾上松也)の計らいにより、右大臣に叙されることとなった源実朝(柿澤勇人)。政子(小池栄子)が愛息の栄達を喜ぶ中、鎌倉殿への野心に燃える公暁(寛一郎)は三浦義村(山本耕史)のもとを訪れ、鶴岡八幡宮で執り行われる拝賀式について密談を交わした。

 三浦館の動きに胸騒ぎを覚える泰時(坂口健太郎)は父・義時(小栗旬)に伝えるが、「これ以上の詮索は無用」と説き伏せられる。

 さらに義時は、時房(瀬戸康史)には「これからは修羅の道。付き合ってくれるな」と了解をとり、「源仲章には死んでもらう。工業が鎌倉殿を狙っておる拝賀式の最中」と教える。「すぐに公暁を取り押さえましょう」という時房に、「余計なことはするな。もはや愛想は尽きた。あのお方は、鎌倉を捨て、武家の都を別のところに移そうと考えておる」と実朝の考えを伝え「そんなお人に鎌倉殿を続けさせるわけにはいかん。断じて」と首を横に振った。

 実朝の真意を知り、公暁による“暗殺計画”を知りながら、手を出さなかった義時。ネットは「義時もう鎌倉殿を見捨ててる」「あーあもう鎌倉殿切る気だよ…」「鎌倉殿見るの怖い」「小栗義時ダーク化完了」「鎌倉殿見てる人のツイートが悲鳴しかないやんけ」「小栗旬にあんな睨まれたら無理」「義時はもう止める気がないのか… 義時による鎌倉殿を生かすかどうかの『審判の日』」といった声が寄せられた。

 「鎌倉殿の13人」は61作目となる大河ドラマ。脚本は2004年「新選組!」、2016年「真田丸」に次いで3回目の大河ドラマ執筆となった三谷幸喜氏。鎌倉幕府の二代執権・北条義時を主人公に野心とは無縁だった若者が武家の頂点へと上り詰めていく生涯を描く作品となる。

2022年11月20日 20時45分スポーツ報知

https://hochi.news/articles/20221120-OHT1T51211.html?page=1

 北条義時について、評価は北条家と鎌倉を守ろうとして、必死にやっていたら様々な権力闘争を行ったというような評価がある。実際に、今回もそのような内容ではないか。実際に、「北条家」の目指したものというのは、初回に近い時期、義時の兄である北条宗時が「坂東武者の世の中をつくる。そしてそのてっぺんに北条が君臨する」という夢をそのまま実現しているのに過ぎない。まさに源頼朝も、北条義時もその考え方をそのまま踏襲していたということになる。

 その考え方を否定したのが源実朝というようなストーリーになっている。ある意味で源実朝は、和歌をたしなみ、京都にあこがれた部分が少なくない。その意味において、北条家の理想とは全く異なるということになる。北条義時にすれば、それまでの御家人との争いではなく、自分の姉の子供や孫、つまり、自分の甥にあたる人物を殺してゆくということになってゆくのであるから、その役どころは厳しい。同時に北条政子を演じる小池栄子さんの演技もなかなか光る部分があるのではないか。

 さて、今回は、源仲章との抗争、つまり「京都の権謀術数」と「坂東武者の武力」という戦いになる。ある意味で後鳥羽上皇は、源実朝を動かすことによって間接的に武士を支配しようとしていたことは間違いがなく、そのお目付け役に源仲章を使ったということになろう。ある意味で仲章は阿野全成の三男・頼全を処刑していることから、信用できる人物であったに違いない。そしてうまく実朝を取り込んだということになろう。

 あえて来週のネタバレになってしまうが、その実朝と源仲章、つまり、後鳥羽上皇の「手先」を全て殺してしまったのが公暁であるということになる。その公暁をそそのかしたのは三浦義村であるというように、「鎌倉殿の13人」の中では書いているが、実際にその辺のところはどうなるのであろうか。いずれにせよ源実朝と源仲章がいなくなった後鳥羽上皇は、直接北条を排除するということに立ち上がらなければならなくなった。つまり、その二人の死が承久の乱の伏線になるということになる。

 ある意味で、歴史ドラマは「伏線」とその「回収」が、次の伏線につながるということになる。今回のドラマは、史実がそうなのであるが、まさに一つの伏線が次の伏線につながるということの面白さ、ある意味で「事実は小説より奇なり」をうまく表しているのではないか。

宇田川源流

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