「宇田川源流」【大河ドラマ 鎌倉殿の13人】 伊賀の方といわれる義時の継室の二面性の表現の巧妙さ

「宇田川源流」【大河ドラマ 鎌倉殿の13人】 伊賀の方といわれる義時の継室の二面性の表現の巧妙さ


 毎週水曜日は、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」について、歴史小説の執筆者として勝手にさまざまなことを書いている。それにしても毎回見ているが三谷幸喜氏の脚本、そしてNHKの人々の演出というのは、なかなか巧妙で素晴らしい。伏線という伏線が全て有効に作用しているということが、なかなか面白い。一人で本を書いていてもそこまでの話はなかなかかけないのではないかと思う。この辺は、後半にしっかりと書いてゆこうと思う。

 さてまず今回は吾妻鑑の中で「姫の前」といわれた比奈(堀田真由)がいなくなった後の継室として、後に吾妻鑑の中で「伊賀の方」といわれるのえ(菊地凛子)が登場した。

 はっきり言って、この伊賀の方はかなり悪人である。

 伊賀の方は、藤原秀郷流の伊賀朝光の娘で母が二階堂行政の娘ということになる。鎌倉幕府の二階堂行政の孫である。1205年(元久2年)6月22日に政村、1208年(承元2年)に実泰を産んだ。この北条政村が7代の執権であり、その後に泰時のひ孫、5代執権時頼の子である時宗に執権が戻ることになる。

 さて、この正村と伊賀の方に関しては様々な問題が後に出てくる。まずは「伊賀氏の変」というものである。これは北条政子のでっち上げというようなことが言われてもいるが、実際に吾妻鑑にも伊賀の方が政子によって処分(伊豆に配流)となったことが書かれている。

 伊賀氏の変とは、貞応3年(1224年)7月、夫義時の急死後、兄光宗と共に実子である政村を幕府執権に、娘婿の一条実雅を将軍に擁立しようと図るが、尼将軍北条政子が政村の異母兄泰時を義時の後継者としたことにより失敗し、伊賀の方と光宗・実雅は流罪となったという事件である。まあ、鎌倉時代というのは、片方で朝廷と対立しながら片方で武士の棟梁として権勢を誇るために、様々な人が権力闘争をしていたことがよくわかる。その中の中心人物が、前半は北条義時であり、その動きが巧妙であったことから、北条氏が残ったということになるのではないか。

「鎌倉殿の13人」きのこ大好き?のえ“裏の顔”泰時&ネット呆然 八田殿も節穴…菊地凛子に絶賛&納得

 俳優の小栗旬(39)が主演を務めるNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜後8・00)は4日、第34話が放送され、大河初出演となる女優・菊地凛子(41)が初登場した。主人公・北条義時の第3の妻・のえの“二面性”をいきなり見事なまでに体現。視聴者を驚きに包む大河デビューに、インターネット上には絶賛や納得の声が集まった。

 <※以下、ネタバレ有>

 稀代の喜劇作家にして群像劇の名手・三谷幸喜氏が脚本を手掛ける大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。鎌倉を舞台に、御家人たちが激しいパワーゲームを繰り広げる。三谷氏は2004年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は8作目にして大河初主演に挑む。

 第34話は「理想の結婚」。3代鎌倉殿・源実朝(柿澤勇人)と後鳥羽上皇(尾上松也)の従姉妹との婚姻が決まり、政子(小池栄子)の心配をよそに喜ぶりく(宮沢りえ)。一方、後鳥羽上皇は源仲章(生田斗真)慈円(山寺宏一)らと鎌倉の行く末について思案していた。そんな中、代々受け継ぐ「惣検校職」のお役目を返上するように、と北条時政(坂東彌十郎)から求められた畠山重忠(中川大志)は疑念を抱き、北条義時(小栗)に相談し…という展開。

 義時にも縁談が持ち上がる。

 文官・二階堂行政(野仲イサオ)は孫娘・のえ(菊地凛子)を「もらってやってくれんか。気立ての優しい子なんだ。頼むよ。非の打ち所がない。身内が言ってるんだから、間違いない」と猛プッシュ。一度会うことになり、八田知家(市原隼人)に“見極め”を依頼した。

 鎌倉御所、庭。義時はのえと初対面した。

 のえは石橋山の戦いに興味があり、義時の肩の枯れ葉にも気付く。知家も「非の打ち所がない」「裏表なし。あれはそういうおなごだ」などと太鼓判を押した。

 義時はのえを自宅に招き、きのこを贈る。のえは「きのこ!大好きなんです!ありがとうございます」と喜び。義時の息子2人とも、すぐに意気投合した。

 義時はのえとの結婚を決め、政子(小池栄子)に報告した。

 北条泰時(坂口健太郎)が侍女の部屋の前を通り掛かる。

 のえ「それ?きのこ。持っていきな。どうぞどうぞ、私、嫌いだから。御所の女房はもうおしまい。小四郎殿に嫁ぐってことは、鎌倉殿とも縁者ってこと。(侍女たちに)控えよ、控えよー!(大笑い)」

 のえの“裏の顔”。泰時は呆然とした。

 SNS上には「きのこ嫌いだったのか。もう何も信じられない」「小四郎のきのこ信仰、連戦連敗やんけ」「まさかの!八田殿も見抜けなかった!じゃあ私にも無理じゃー(笑)」「菊地凛子さんの演技の説得力が凄かった」「ヤンキー女子会。きのこ伝説がまた崩れる…のえに菊地凛子さんをキャスティングしたのが分かったわ」などの声が続出。初登場から大反響を呼んだ。

 

[ 2022年9月4日 20:45 ] スポニチアネックス

https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2022/09/04/kiji/20220904s00041000414000c.html

 それにしても、今回の内容はなかなか面白い。まあ、ジェンダーハラスメントとか様々なことを言われるが、しかし、それにめげずに「女」ということを伏線の第一に置いた。そもそも「理想の結婚」ということが今回の題名なのであるから、なかなか面白い。

 まずは三代将軍源実朝の教育ということから始まる。その実朝の本質を見抜いているのは、北条政子だけで、歌集を写したものを渡すというくだりがあるが、そのあたりもなかなか興味深い。しかし、それ以上に笑いが出たのは、三浦義村の「処世術」であろう。完全に狙っているが、「後腐れのない、おなごとの別れ方について。相手に、自分と出会ったことを決して後悔させてはなりません。楽しかった思い出しか残さない。これが一番。だから私は、おなごの前では、力の限り尽くします」として、頭を深々と下げるとその後ろに「天命」と書いてある。

 しかし、その「女性との関係」ということをテーマに今回はすべてが動く。

 まずは実朝の嫁ということになるが、それを迎えに行った北条時政とりく(牧の方)の息子北条政範が、京都で「急病」によって死ぬ。その前に様々な陰謀が尽くされるが、あるいみでは享年16歳の若者には京都の権謀術数はかなり荷が重かったのではないか。北条時政とりくの、京都を甘く見た付けが子供一人にすべてが入ってきてしまっていたということになるであろう。

 その後に、二階堂行政が、北条義時にのえを勧め、のえと会うということになる。この時にあえて八田知家にのえを見て欲しいというように依頼するところが面白い。ある意味で、三浦家と北条義時の「溝」というものも感じる。その「溝」の伏線になるのが畠山重忠と父北条時政の強欲ということになるのではないか。

 要するに、「政治」「女性」という二つが重なり合って、「いつもと違うこと」をしたことによって次の展開が出てきているということになるのではないか。その結果が実朝の嫁鳥と、北条義時の後妻ということになる。

 そして、その後妻が実に「裏表のある」女性であったというオチだ。武辺者の男に女性は理解できないということが、これまたものの見事に出てくるわけであり、また、人間には得手不得手があるということになるのであろう。知家も「非の打ち所がない」「裏表なし。あれはそういうおなごだ」などと太鼓判を押したことがあだになる。「それ?きのこ。持っていきな。どうぞどうぞ、私、嫌いだから。御所の女房はもうおしまい。小四郎殿に嫁ぐってことは、鎌倉殿とも縁者ってこと。(侍女たちに)控えよ、控えよー!(大笑い)」を見てしまった泰時が呆然とするということになろう。

 まあ、ここで見るのが泰時であり、その前に比奈のことで言い争いをしているということも、また伏線になる。逆に、義時が意固地になってのえとの結婚を決めるきっかけになるという伏線も用意されている。そして、その泰時の世になって、義時を毒殺する疑惑が出ることになろう。

 なお、藤原定家の『明月記』によると、義時の死に関して、実雅の兄で承久の乱の京方首謀者の一人として逃亡していた尊長が、義時の死の3年後に捕らえられて六波羅探題で尋問を受けた際に、苦痛に耐えかねて「義時の妻が義時に飲ませた薬で早く自分を殺せ」と叫んで、武士たちを驚かせているというエピソードがある。

 いやいや、女生とは怖いものである。

宇田川源流

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