「宇田川源流」 ペロシ下院議長の台湾訪問の真の狙いは11月中間選挙への選挙パフォーマンスなのか?

「宇田川源流」 ペロシ下院議長の台湾訪問の真の狙いは11月中間選挙への選挙パフォーマンスなのか?


 先週8月3日、アメリカのペロシ下院議長が台湾を訪問した。正式訪問であるということは、ペロシ氏が政府専用機で入国したことを見ても明らかなとおりである。つまり、トランプ大統領が制定した台湾との外交に関する法律に基づいて、政府の高官である下院議長がアメリカを代表して「国家」としての台湾の蔡英文総統と会談したということになったのである。

 この一週間前、本ブログでも解説した通りであるが、バイデン大統領は中国との間で「一つの中国の政策を堅持する」として、世界にいる多くの民主主義者の期待を裏切った発言をしたばかりである。その舌の根も乾かぬうちにとはまさにこのことなのであろうが、その同じ民主党のアメリカ政府No3である下院議長が、公式に台湾を訪れるということになったのであるから、それは様々な人が「なぜ」というようになる。

 もちろんペロシ氏の行動を非難するものではないが、しかし、冷静に見れば、アメリカの民主党バイデン政権においては、その内閣の不一致であり、なおかつそれは米中外交の基本姿勢も、また太平洋戦略も、そして、アメリカ軍の関係もすべてがバイデンとペロシ、つまりホワイトハウスと議会で全く異なる対応をしているということになる。

 もちろん、そのように考えたとしても、台湾から考えれば公式訪問は、非常に素晴らしいことであり、トランプ大統領の時代もできなかったことであるから、台湾は「台湾独立」が一歩進んだというようにとらえることになろう。しかし、一方で台湾そのものは、中国と戦う意思があるのか、または、その被害を受ける覚悟ができているのかということが非常に大きな内容になってくるということになろう。

 一方でアメリカは、少なくとも軍隊はアメリカ大統領の指揮下にあるのであるから、ペロシ氏がどんなに頑張ってもアメリカ軍が動くことはない。そのことから考えれば、ペロシ氏が台湾を訪問してもそのことが米中戦争につながるとは限らないということになる。ぎゃくにいえば、台湾進攻が始まったとしても、ペロシ氏には抑止力にはならないということになるのである。

 ではなぜ、ペロシ氏はこの時期に台湾を訪問したのであろうか。

蔡氏 ペロシ氏と会談し謝意

 【台北、ワシントン時事】台湾を訪問したペロシ米下院議長は3日、台北市の総統府で蔡英文総統と会談した。台湾統一を目指す中国の軍事的圧力に警戒が強まる中、ペロシ氏は会談で「米国が台湾に対する関与を放棄することはない」と断言。米国と台湾の「永遠の友情」を明確にすることが訪台の目的だと語った。

 ペロシ氏は「台湾と世界の民主主義を守るという米国の決意が揺らぐことはない」と主張。会談後の記者会見でも「米国は台湾と共にある」と支持を表明した。

 台湾では、ロシアによるウクライナ侵攻に際して米国が軍事介入しなかったことを受けて、台湾有事が起きても米軍は支援してくれないという「米国の台湾放棄論」がくすぶっている。ペロシ氏はこうした不信感の払拭(ふっしょく)に努めた形だ。

 これに対し蔡氏は会談で「意図的に高められた軍事的脅威に直面しても、台湾は引き下がらない」と宣言。「主権を維持し、民主主義の防衛線を守る」と述べ、台湾海峡の平和と安定を維持するため自衛力を高める決意を述べた。

 ペロシ氏は米国と台湾の公的交流を認めない中国が重ねて警告を発する中、米下院議長として25年ぶりとなる台湾訪問を決行した。米大統領職の継承順位2位という要職である下院議長の訪問は、米国の台湾に対する力強い支援を表すものと言え、蔡総統は会談で「非常に感謝している」と伝えた。 【時事通信社】

2022年08月03日 22時12分 時事通信

https://news.nifty.com/article/world/worldall/12145-1786471/

ペロシ氏を超党派で支持/米

 【ワシントン時事】ペロシ米下院議長の台湾訪問について、米連邦議会では超党派で支持する声が広がっている。近年議会で高まっていた対中強硬・台湾支援の雰囲気も、今回の訪台実現を後押ししたと言えそうだ。

 野党共和党の上院議員26人は2日、連名でペロシ氏の訪台を支持する声明を発表。同党上院トップのマコネル院内総務ら重鎮も名を連ね、「何十年にもわたり米議員は台湾を訪れてきた」と正当性を強調した。「今われわれには(米国の安全保障上の関与を定めた)台湾関係法の全ての要素にかつてないほど責任がある」ともつづった。

 民主党のメネンデス上院外交委員長は米メディアに「誰が台湾に行けるかを中国に決めさせるなら、既に台湾を中国に譲り渡したことになる」と指摘。同氏はペロシ氏に先立ち、4月に台湾を訪問しており、帰国後、台湾に4年間で45億ドル(約6000億円)の軍事支援を提供する超党派の法案を提出している。 【時事通信社】

2022年08月03日 08時25分 時事通信

https://news.nifty.com/article/world/worldall/12145-1786069/

 さて、あえて言っておくと、今回のペロシ下院議長の台湾訪問は今年11月に行われる中間選挙に対する「選挙パフォーマンス」であるという見方が強い。まずこの時期にアメリカの人々がわざわざ台湾に行く必要はなく、なおかつそのアメリカ高官が中国を刺激する必要はない。一方で、ウクライナでも弱気、台湾に関しても弱気という状況であるバイデン大統領の外交上の発言に関しては、誰もが眉を顰めるじょうたいであり、11月の中間選挙では民主党の敗北はほぼ確実であるということが言われている。せいぜい中絶を憲法上のけんりと認め無くした連邦最高裁判所の判決に関する混乱くらいしか民主党に有利な点がなく、物価政策も、外交政策もすべてがダメ、サウジアラビアまで言ってムハンマド皇太子と会っても「お土産なし」という状況にアメリカ国民は、さすがにバイデンを見限っているのである。

 その状況は、CIAのバーンズ長官をして「事前まで強くに話すといっていて現場に行くと話すことが変わってしまうので、お手上げである」ということを言っている状況であり、完全にバイデン大統領を見限っている状態である。いくら情報部が情報を入れても、それを活用せずに相手に臆して話ができないのであれば、すでに大統領としての資格はないのである。

 さてペロシ下院議長の立場からすればどうなるであろうか。中間選挙とはすなわち議会占拠である。そこで敗北するということはそのまま議長の座を失うということになる。大統領となるまでもないが、しかし、一方で権力の座をそのままにしておきたい場合バイデン大統領とは異なり「民主党」という政党の地位を上げてゆかん帰ればならない。ある意味で日本の政治における「官邸」と「自民党」の関係のようなものであり、必ずしも一体化しているというような者ではないのであるから、当然に民主党が独自に判断し、その民主党という政党を上げる政策をとることがあるということに他ならないのであろう。

 そのように考えた場合、ペロシは下院議長という自らの地位と、民主党という政党の地位を考えて、独自に政治パフォーマンスとして行ったというように考えるのが普通である。外交権があるわけでもなく、なおかつ、ホワイトハウスにある政治的な内容とは異なる。その意味で今回は国内パフォーマンスでしかなく、外交的な意味合いは少ないと考えるべきであろう。

 そのようなペロシ氏の動きに過剰反応したのが中国であるということになる。アメリカのスポークスマンの対応はそのような状況になっていると考えるべきであり、その辺を冷静に見るべきである。日本のマスコミは「上から数えて何番目」ということは報道するが、その人に何の権限があるのかまでは報道しないという不手際であるから、まあ正確に物事が伝わらないのであろう。

 このように考えて、今回の内容は「その後のから騒ぎ外交」をどのように解釈するかということを考えるべきであるし、同時に、民主党とバイデンの関係をどのように見てゆくか、後に年間バイデンがレームダック化する状況を見てゆくということになってゆくのではないかということを考えるべきなのかもしれない。

宇田川源流

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