「宇田川源流」 総選挙の結果を考える

「宇田川源流」 総選挙の結果を考える


 さすがに本日は総選挙の結果を考える。なお、月曜日のぎりぎりまで最終の開票結果が確定しないので、まあ、その辺はちょっと暫定感がぬぐえないところがあるが、しかし、その内容に関して、だいたいの体制は決まっている地うことになる。まあ、比例というのはなんとなくその辺の納得がいかないところがあるので、どうしても好きになれない。私が小さかった時分の「中選挙区制」の方が、やはりなんとなくわかりやすいのである。

 さて、今回の選挙に関しては「自民党の単独過半数」ということが言える。そもそも」「岸田内閣」というのは、まだ発足したてで、何もしていないので「岸田内閣の審判」ということにはならないが、各新聞は「政権の審判」というような単語を使ってしまうのである。まあ、与党の政治ということに関しては審判は存在するのであるが、その内容がそのまま出てくるという物ではないのかもしれない。

 さて、私の個人の感想とすれば岸田文雄氏は選挙はかなり弱い。私が国会新聞に在籍していた時の話であるが、岸田氏が応援に行った候補が多く落選するということを目撃している。実際に、当時(10年以上前の話ではあるが)、宮城県を回った時に岸田氏が応援演説に来たが、なんというか「華」がないのである。真面目でなおかつあまり争いを好まないのはわかるが、実際には、それでは政治の世界では戦えないということになる。

 宏池会というと「お公家衆」という言い方をする古い政治評論家は少なくないのであるが、まさに、あまり戦えないところが少なくない。そのためにただ批判しかしない野党との間において、なかなかうまく戦えないのである。

 特に、現在70代というのは、まさに「団塊の世代」であり、その人々が数多く上に重なっている状態であることから考え、なおかつ潜在的な保守層である若者の気持ちをくみ取れるようなところは少ないということになるのである。その意味ではかなりさまざまな人が苦戦を強いられたということになるのではないか。弱い、あまりカリスマ性のない総裁、そして、今は論評を控えたが、少々くらい感じの幹事長、そして若者の心をくみ取れない、流行に取り残された永田町人では、なかなか選挙はうまくゆかない。はっきり言って、野党が勝手に転んでいるから何とかなっているが、まともな野党がいればとっくに政権交代をしているのではないかという気がする。まさに、このような与党に負けている野党はもっとひどいということになる。その戦いであるから、選挙に興味が無くなるのである。戦う姿勢のない与党と、批判しかできない未来が見えない野党。まあ、日本人の政治というのはこのようなものなのかもしれない。

自民261、絶対安定多数 立民後退、維新3倍増―衆院選、全議席確定【21衆院選】

 10月31日投開票の第49回衆院選は1日午前、全議席が確定した。自民党は公示前の276議席から減らしたものの、焦点の過半数(233)を大きく超え、国会を安定的に運営できる絶対安定多数の261に到達。共産党など野党4党と共闘を進めた立憲民主党は公示前の110議席に届かず、96議席に後退した。共闘から距離を置いた日本維新の会は3倍以上に増やし、第3党に躍進した。

「自民1強」に疑問符【21衆院選】

 岸田文雄首相(自民党総裁)は続投し、10日に召集される見通しの特別国会で第2次岸田内閣を発足させる。立民の枝野幸男代表については党内から責任を問う声が出る可能性もある。

 自民党は選挙区で公示前の210議席から189議席(追加公認2人を含む)に減らしたが、比例代表は66議席から72議席に伸ばした。青森、山形、群馬、山梨、富山、石川、福井、岐阜、滋賀、鳥取、島根、山口、愛媛、高知14県で議席を独占。大阪と佐賀は全敗した。

 甘利明幹事長が選挙区で敗北し、首相に辞任する意向を伝えた。首相が続投させるか判断する。

 立民は共産党、国民民主党、れいわ新選組、社民党と213選挙区で候補者を一本化して臨んだが、選挙区57議席、比例代表39議席にとどまった。

 維新は41議席に伸ばし、単独で法案提出が可能になる21議席を大きく超えた。選挙区では拠点の大阪で15勝するなど堅調で、16議席を獲得。比例代表は25議席だった。

 公明党は選挙区に擁立した9人全員の当選を果たし、公示前の29議席を上回る32議席を確保した。

 共産党は沖縄1区で議席を維持した。ただ、全体では10議席で公示前の12議席に届かなかった。

 国民民主党は11議席で公示前の8議席を超えた。

 公示前は1議席だったれいわ新選組は比例で3議席を獲得した。社民党は選挙区で1議席を確保した。「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」は議席を得られなかった。

2021年11月01日08時21分 時事通信

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021110100402&g=pol

さて、今回の内容について、まずはマスコミの記事ではわからない話から先にしよう。そもそも、10月27日くらいから、「自民党大幅に議席を減らす」という内容の話が多く入っていた。実際に30日の前日の期日前投票出口調査でも、また31日の16時段階のNHKの出口調査も「自民党単独過半数ならず」というものであった。NHKに至っては「自民党210議席もありうる」という報道であったのだ。

私の場合、公示日の段階で自民党246議席±5というような予想をしていたので、かなり外したなと思い、自分の予想を先に伝えていた人々には、18時の段階で訂正のお詫びの電話をしたものである。当然にNHKの20時のニュースの段階では「自民党単独過半数割れか?」というような見出しで選挙開票速報番組が始まると思っていた。実際に、20時の段階では岸田首相の顔は雲地、枝野立憲民主党代表はかなり浮かれた表情であった。

しかし、ふたを開けてみれば、そうではなかったということになる。

さて、今回の内容はどのようなことなのであろうか。

まずその特徴を見てみよう。

・ 与野党問わず「大物」といわれる議員が落選または苦戦を強いられた。

・ 自民党・立憲民主党が議席を減らし、維新が議席を伸ばした。

・ 自民党単独過半数・与党絶対安定多数という状況になった。

 さて、この状況からみて言えることは「世代交代」「まともな野党の窮乏」ということであろう。

 詳しくは私の講演会など他の所での解説に譲るが、簡単に言えば、「口だけで何も実行しない人」や「批判しかできない議員」の落選というのはなかなか興味深い。石原伸晃元幹事長の選挙戦の報道で「お前何やったんだ」というようなヤジが飛んだのが見えているが、まさにそのもので、「大物」であるからといって国民のために汗をかかない人々が排除されたのである。これは、企業における年功序列の否定や能力主義と同じ、また野党に対して言えば、会社の中に会議で反対ばかりしているが任せれば仕事ができない人が多くいるが、そのような「老害」「反対ばかりの人」が排除されたということになろう。これは、与野党に関係なく、「ジェネレーション」として国民の批判が多くあったものと考えられる。

 もう一つは、反対しかできない野党は完全に排除された。実際に立憲民主党は、共産党と選挙協力したにもかかわらず議席を減らしたのである。これは「確かな野党」という共産党との連携が完全に裏目に出たということであり、トヨタ労組などの離反が響いたということになろう。逆に、例えば失敗したとしても「都構想」などといって、しっかりと政策を出した維新の方が高く評価されている。まさに「非自民」の票の受け皿は、立憲ではなく維新になったという象徴的な出来事ではないか。このことは「若者」を中心にした55年体制を経験していない有権者が、「自民党に反対するのは社会党」というような既成概念が無くなったことを意味しており、我々も、そろそろ老害といわれる状態になってきているのではないか。

 そして、最後にマスコミはこれらの「トレンド」を全く読めていない。まさに、マスコミこそ、若返りが必要なのかもしれない。最も批判されているのは、マスコミの方かもしれないのである。

 今回の結果はそのような者ではなかったか。

宇田川源流

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