「日曜小説」 マンホールの中で 4 第三章 11

「日曜小説」 マンホールの中で 4

第三章 11


「ここが朝日岳の御殿平ですか」

 途中、何度もゾンビに襲われながら、スネークの機転を利かせた攻撃によって何とかここまでたどり着いた。数カ月前、ここで宝石四つを台座に仕掛け、その上で、奥の扉を開いた時はこのようなことになるとは思わなかった。あの時は「戦中の東山将軍の財宝が眠る」という都市伝説をもとに、その秘密を暴き、そして、本当にあった「隠し部屋」というか、アメリカ軍と戦うための、最後の拠点がここであったと思われ、この山の中に大量の武器や食料、そして金塊などが残されていたのであった。

 しかし、ここでそのような「過去の遺品」を探している間に、郷田一味がここにきてそれらを荒らしていった。当時盲目の善之助やなどがいたために、さまざまなものを調べることもなく、そのまま逃げるようにして出てきてしまったのである。

「そうか」

 次郎吉はつぶやいた。

 すでに目の前には、金塊も食料品も何もなかった。街の体育館の数倍の広さの何もない空間に、何か、現代では役に立たない価値のない残骸がいくつか転がっていた。

「どうしたんです」

「いや、郷田はここでピンクのガスを手に入れたんだよな」

 次郎吉は一言そういった。

 ゾンビに襲われたと思われる「鼠の国」からの連絡はない。なんとなくあの時の時田や五右衛門、そしてその鼠の国にいるであろう善之助のことなどを思い出しながら、ふと、そんなことを言った。いや、もし自分があの時ここを開かなければ、今回のようなことがなかったのではないか。そんな自責の念が、次郎吉の頭の中に浮かんだ。

「スネーク。あの東山の地下壕には、ピンクのガスと一緒に緑のガスもあったよな」

「はい、おおきなタンクで、いくつも」

 今まで、善之助や時田と話していた「東山将軍」という、戦中の陸軍中野学校のエリートの人物像が次郎吉の中で浮かんだ。今まであまりのことでゆっくり考える時間がなかったが、今まで次郎吉は泥棒に入るにしても、必ずその家の人の行動やその家の中にある者から、その家の人の性格や能力を想像し、そして行動を読み切った後でしか、盗みに入らなかった。最近ゾンビとか宝さがしとか、そういったことばかりでそのことをすっかりやっていなかった。

 久しぶりに、少し考えてみる次郎吉。

「そうだよな。あったよな」

 なぜ東山は、地下壕の中に緑のガスのタンクを用意したのか。そして「寄生虫を集める」ということが分かった黄色のガスというのはなぜ必要なのか。

「なるほど」

 次郎吉は、なんとなく一人で笑みを浮かべながら唸った。

「なんだ、気持ち悪いな、次郎吉」

 スネークは、薄暗い、それも広い洞窟の中で一人笑いをしている次郎吉を見てそういった。

「いや、東山将軍について考えていた」

「そんな、昔の人、顔もわからないのに」

「ああそうだ、でも、なぜ時田さんは我々二人をここに来させたのか。それは、東山の地下壕と関係があるということなんだよ」

「どうした次郎吉」

「要するにだ、東山将軍という、昔の天才軍人は、脳を食べてしまう寄生虫を発見し、そしてそれを兵器として使うことを考えた。しかし、将軍にしてみれば、それは敵の頭の中だけを食べてくれなければならなくて、見方、または守りたい日本人の脳を食べられては困る存在なんだよ」

「そうなるな。まあ、今はまさにそれを日本人がかぶって大変なことになっているが」

 スネークは、特に支持がないのでやることもなく、仕方なく次郎吉の一人が足りに付き合った」

「つまり、日本人には、何かワクチンか免疫を作り、一方、アメリカ人にはそれがないという形にしたはずだ。しかし、それは、しかし全員にそれを接種することはできない。ある程度、日本人の普段の生活の中に取り入れられている何かがあり、それを入れることで少しは抵抗ができるようにしていたはずだ」

「なるほど」

 スネークはだんだんと飽きていていた。

「しかし、それでは、町中にゾンビ化したアメリカ兵が多く出てしまう。そのために黄色いガスでゾンビ化したアメリカ兵を一か所に集め、そして、それを緑のガスで一網打尽にするということを考えていた」

「凄い計画だね」

「それを東山の地下壕で行ったということになる。」

「なるほど」

「つまり、あそこには緑のガスと黄色のガスで一か所に集め、その上で、その寄生虫を殺す、もちろんアメリカ兵はその前に寄生虫に食われていたわけだが、それを全て動かなくさせてしまうことができるだけのガスが貯蔵してあったということになる」

 次郎吉は、そう考えた。

「ではここの役割は何だ」

 スネークはそういった。そうなのだ、もしも次郎吉の言っているとおりであるならば、東山の地下壕で全て終わっているはずである。何もこんな山の上に入ってくるはずがない。

「そうだ、スネークは知らないと思うがここには武器や食料があった。つまり、ここの人治には長く駐留するということになる」

「そうだな。その上武器も多数あったのでしょう。つまりここでは物理的に戦う気であったのでは」

「しかし、ここに郷田が持っていたピンクのガスがあった。つまり、ここにはここに上がってくる敵がいて、それに対して対処したということになる。」

「なるほど」

「アメリカ兵は、一度引いてもそのまま引き下がることはないだろうと考えるよな。そうであれば、一度アメリカ兵が撤退した後に、ここに陣地を映すことになる。その時にアメリカは当然元の地下壕を攻撃するということになるし、また、前回よりも大規模な軍隊が投入され、飛行機からの空襲もあったと考えるべきであろう。空襲に負けないように、ここみたいに洞窟陣地にしている。しかし、その後、大規模な軍隊はどうする。」

「もう一度ピンクのガスを町中にばら撒く」

「そうだ、それだけではなく、ここに敵を引き寄せなければならない。だからここに大規模な陣地があるように見せかけ、そしてアメリカ軍の耳目を引き付ける行動をしたはずだ。そうであれば戦車や大砲があったことは頷ける。そして、一方で街の中に、ピンクのガスをばら撒いてアメリカ軍を混乱させたうえで、ここで戦ったに違いない。それに、ここに来たら、より強力な寄生虫がいたといっても過言ではない。山に登ってくる敵に対して麓や下のところで、何かピンクのガスの強力なものがまかれたはずだ」

 次郎吉はシミュレーションしたが、さすがに軍人ではないので、アメリカ軍が陣地にする場所などは全くわからなかった。しかし、この山の中に可なり巨大な寄生虫ガスのタンクがあることはわかる。「それで」

「そうだ、ということはそれを中和するガスも、この中にあるはずだよ」

「なるほど」

「探そう」

「ここにも黄色のガスがあるのか」

「それはわからない。でもここの並びに、司令官室があった。つまり地下壕と同じにそこの近くに隠れたガスのコントロールルームがあるはずなんだ」

 スネークには、やっと次郎吉の考えていることが分かった。

「なぜ指令室の近くとわかるのだ」

「ここや食糧庫はこれだけの奥行きがあるのに、指令室だけは小さい。つまり、その奥に同じような空間があってもおかしくはないということになる。それを、洞窟という自然物を使うことによって、わざとそのように思わせないようにしているのだ」

「なるほどね」

 次郎吉とスネークは、指令室のあった方に向かった。

宇田川源流

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