「宇田川源流」【大河ドラマ 青天を衝け】 土方歳三の死と武士の商売

「宇田川源流」【大河ドラマ 青天を衝け】 土方歳三の死と武士の商売


 水曜日は大河ドラマ「青天を衝け」について書いている。先週から舞台は明治時代になった。しかし、まだ函館の五稜郭ではまだ戦っているという状態である。今回の「青天を衝け」では、その幕末が終わるというところをしっかりと行っているということになる。しかし、なかなか興味深いのは、今回の内容は、坂本龍馬のいない幕末を書き、また、榎本武揚を全く出さない函館戦争を描いている。函館戦争を高松凌雲、土方歳三、渋沢成一郎この三人だけを中心に書いていたのであるからなかなか面白い。もちろん渋沢栄一の物語の中に、後に外務大臣になる榎本武揚が不必要である。しかし、歴史の常識的にみていれば、なかなか榎本武揚のいない函館戦争などは見ることはできない。

 ちなみに函館には他にも多くの「元大名」がいた。老中筆頭板倉勝静、元老中小笠原長行、元京都所司代松平定敬などがそれである。薩摩と長州、特に長州はあまりにも嫌いというものが少なくない。そのうえ、すでに板倉勝静の備中松山も、小笠原家の小倉も、松平定敬の桑名も、すでにすべて降伏してしまっている。つまり彼らには帰るところがないのだ。彼らについてきた藩士の中には、そのまま新選組に入隊し、函館で戦ったのである。

 さて、ドラマではその内容は榎本武揚も書いていない状態ではあるものの、なかなか素晴らしい書き方になっている。これから死んでゆく土方歳三と、生きて明治を生きる渋沢成一郎という対比になっている。これはこの前の回の尾高長七郎と渋沢栄一の対比と全く同じ対比を二週連続で「生きろ」というメッセージを出した。渋沢兄弟には、どうもそのような内容のものがあるのではないか。現代の人々に「生きろ」というメッセージをしっかりと描いている。そして、もう一つが、その土方歳三の死の美しさだ。新選組というのはある意味で「散る美学」の塊であるといえる。その「散る」というのがなかなか美しく書かれている。「死んでゆくもの」というのは、ある意味で覚悟を決めて死んでゆく。そしてそれは「国」や「幕府」というような大きなものになぞらてえいるものの、実際は、「自分の信念」というものに殉じている。そして、「生きろ」というメッセージは「死ぬ人」が「死ぬことのばかばかしさ」と「生きることの辛さ」がわかり、そして自分は「簡単な死ぬこと」を選んだということを知っているのである。

 生きろ、そのメッセージは生きうることの難しさと、死ぬことの簡単さ、そしてそれでも死んではならないということをしっかりと伝えているのである。

【青天を衝け】町田啓太が表現した“美しき”土方歳三 共演者も虜にした佇まい

 俳優の吉沢亮が渋沢栄一役で主演を務めるNHK大河ドラマ『青天を衝け』(毎週日曜 後8:00 総合ほか)。きょう19日に放送された第27回「篤太夫、駿府で励む」では、箱館で新政府軍と戦い続けていた土方歳三(町田啓太)が成一郎(高良健吾)を送り出すシーンが描かれたが、町田が演じた土方の魅力について迫る。

 土方歳三は、池田屋事件で功績を挙げた新選組の副長。幕臣になった栄一が謀反人の捕縛を命じられる任務で、警護のために同行することになる。栄一とは同じ百姓出身ということもあって意気投合するシーンもあった。

 第16回「恩人暗殺」で描かれた「池田屋事件」も、土方にとっての見せ場のひとつになった。同回の演出を担当した村橋直樹氏は「とにかく町田さんは動きがきれいなんです。殺陣稽古で、動いてもらったときの剣を振った姿がとても美しい。最近のアクションは、途中でなぐることがあったりつかみ合うことがあったりもするんですけど、町田さんのシーンは、相手はまったく触れられないで一太刀で死んでいく。美しい殺陣を目指して、それを演じてくださいましたね」と町田がまとう“美しさ”を絶賛していた。

 また、10日に放送されたNHK『あさイチ』に出演した町田。その際に、主演の吉沢がVTRでコメントを寄せ「楽屋でモニターで見てたんですけど、あまりにもかっこよすぎて。喜作(高良)と『どうやって土方に勝つ?』みたいな。『土方が出てきたら、土方に持っていかれるね』みたいな会議をしてました」といい、その結果「持っていかれました全部」と話すなど、町田に対しうっとりとしたことを明かしていた。

 本作における土方歳三の出番は、決して多いものではなかった。だが、共演者やスタッフをも虜にした町田の佇まいは、作品に彩りを与えてくれるものになったに違いない。

 2018年の『西郷どん』で小松帯刀を演じて以来、2度目の大河ドラマ出演となった町田。過去の合同取材で、町田は土方という人間について「すごく自信のある人だなと思いました。“鬼の副長”とも言われるくらいですので、狂気じみたところもあるのかなと思っていたのですが、調べていけばいくほど、自分自身にも周りにも厳しく、自分の筋を通そうとやってきた人物だなと。それは本当に心が強くないとできないことだと思うので、すごいです」とぶれない芯の強さを感じ取っている。

 さらに「どう生き、どう死ぬか。それに土方歳三は重きを置いていたと思います。いまもどう生きるか、どう死ぬかは考えなければいけない状況だと思いますし、自分自身もどうありたいのか、問うようになりました」と、自身の生き方を考える役柄にもなったと話しており、今後の俳優人生に土方を演じたことをどのように還元させていくのか、期待したい。

9/19(日) オリコン

https://news.yahoo.co.jp/articles/d97895e352d1dc7be79c19ef1934f3c5acda69fb

 土方ロスが起きるのではないかというようなネット上の盛り上がりである。この俳優町田啓太さんが人気があるというだけではなく、非常にかっこよく書かれている。要領よくといえば悪いが、やはり商売人の素質が若いころからあったように書かれている。渋沢成一郎も、渋沢栄一の援助を受けて廻船問屋や生糸商などを歴任しているのであるから、当然に商売人の素質があったということになる。そのいみでは、土方歳三も全く同じであったと思うが、しかし、彼は武士としてその生涯を閉じた。その感覚がなかなか面白い。

 一方今回もう一つの見どころが駿府での渋沢栄一であろう。特に、「コンパニ―」を作るとして、今まで承認をバカにしていた武士たちに証人と一緒に仕事をするように勧める部分がある。もちろん武士は反発する。明治時代、廃刀令などの後武士は武士の恩給をもらうことになるが、その武士の多くが商売を始め「武士の商法」によってうまくゆかず、そのまま不平士族として徐々に乱を起こすことになる。しかし、本来明治政府に最も不平不満を持っているであろう「駿府藩」の元幕臣たちは、全く不平士族に与することはなく、そのまま駿府を盛り立てていた。会津藩が斗南藩に移ったのは、あまりにも貧しい土地であり、そのために、反乱を起こす人も少なかったとされているが、一方で、駿府の方は、かなり多くの金子があり新政府も注目するほどであった。しかし、それが版籍奉還になってもその後全く不平を言わないということはどのような事であったか。

 その一つの要因は渋沢栄一であろう。しかし、今回の大河ドラマにおいて川村恵十郎が、ほとんど何も言わず、渋沢の行うことに従い、そして刀を外して商人のまねごとをする。そのことから他の武士たちもみなそれに従うということが、一つのきっかけになっていた。そのことが見事に描かれている。なお、その川村は、後に渋沢に呼ばれ明治6年に大蔵省に出仕し、その後大久保利通に従って清に随行、その後太政官、宮内省などに出資し、最後は日光東照宮で禰宜を行うことで、最後まで徳川家に忠誠を誓った人生を送っている。この経歴と考え併せれば、渋沢栄一という自分の部下の下風に立つことなどは関係なく、いかにして徳川家に、そして徳川慶喜に忠誠心を示すのかということを最後まで貫いた人ではなかったか。

 「改革の時は、上に立つものが率先して最も難しいことに挑戦する姿を見せる」ということが重要であろう。今回のセリフの中でも「多くの幕臣俸禄が欲しいわけではない。自分の忠誠心をどこにもって言って納得させるかがわからなかった」という趣旨の発言をしているのであるが、まさにその「精神」のゆき場所、忠誠心をどのように治めるのかということが最も重要なテーマではないか。

 今回は、「死ぬこと」と「生きること」、「現実世界」と「自分の精神」という二つの対比が常に書かれている内容であった。まさにその内容をいかに考えるのか。そのメッセージが非常に重く現在の視聴者に刺さるのではないか。

 何か素晴らしいメッセージ性に富んだ内容になってきて面白いのではないか。

宇田川源流

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