「日曜小説」 マンホールの中で 4 第三章 6
「日曜小説」 マンホールの中で 4
第三章 6
「しかし、この鉄パイプの効果はあるんだろうな」
スネークは歩きながら、8本の鉄パイプのうち一つを手に取って、まじまじと見た。
「良くはわからないけれども、何とかなるのではないか」
次郎吉も、そのパイプをまじまじと見た。よく戦争映画で見るような形ではなく、鉄パイプを水各のこぎりで切った物に、また小さな鉄製の何かが詰まっていて、そこから、手榴弾のようなピンがついているかのような感じであった。
「スネーク、もう一回戻ろう」
「どうしました」
「いや、何かがおかしい」
次郎吉は、そういうと、その鉄パイプをもって足早に元に戻り始めた。
「次郎吉さん、どうしたんだ」
スネークは、慌てて次郎吉の左手をつかんだ。ゾンビがどこにいるのかわからないので、あまり大きな声を出せない。スネークは大きな声を出す代わりに、手をつかんだのだ。
しかし、次郎吉はその手を振りほどき、そしてその場で座り込んだ・
「危ないなあ、落としたらどうするんだ」
「だって、それは寄生虫を殺す手榴弾だろ」
次郎吉は、首を振ると、二つの鉄パイプを取り出して、スネークの前に見せた。
「見てみろ、これ二つ形が違うだろ」
確かに、慌てて切ったのか、鉄パイプのカットの角度が違う。
「いやそんなことではない。中身だ。鉄パイプの中身、片方は緑で片方は桃色、それにピンの色も、わざわざ赤く塗ってある」
確かに違うのである。
「それが」
「いや、この当時の将軍の事を考えてみろよ。もしもこの地下壕の中に、アメリカ軍が攻めてきたら、どうする」
「いや、えっ」
スネークは、急に何を聞くのかと思ったのか、奇妙な声を上げた。
「いや、さっきの映像を見ていて思ったんだ。何しろ緑の爆弾を投げれば、ゾンビは死ぬか、あるいはゾンビが近寄らなくなるわけだろ」
「そうだ。だからこれを探したんだろう」
「そうだよな。しかし、敵はアメリカだ。今の自衛隊のように内科でバリケードを作ってアメリカ軍がここに攻め込んでくる場合もある。その場合、アメリカ軍を全て殺すにはどうする」
「ここで武器で戦うしかないだろう」
「いや、スネーク、よく考えろよ。一度ピンクのガスで寄生虫を入ってきたアメリカ軍の中に蔓延させ、ある意味ゾンビとアメリカ軍で共食いをさせて、そのうえで、緑のガスを撒けば、寄生虫の入ったアメリカ兵は入ってこれないし、また、アメリカ軍の中が混乱する。そのアメリカ軍が混乱しているときに攻撃をした方が、より効率的ではないか」
確かに、次郎吉の言う通り、ピンクのガスと緑のガスを組み合わせ、自分の所には問題が無いようにしながら、アメリカ軍を混乱させて入り口を守った方が守りやすい。つまり、一度町の中にピンクのガスを充満させて、まずはゾンビを作り出し、アメリカ軍を混乱させた後、ここに引き上げ、そのうえで、入ってきたらピンクのガスを発する爆弾を投げて、入り口付近でアメリカ軍を混乱させ、そこを攻撃し、本人の方に入ってきたら緑の爆弾で守ったということになる。地下壕であることから、ガスの逃げ場がなく、アメリカ軍は確実に寄生虫が体内に入り、大混乱になるということになろう。当然に中に向けて大砲を撃ちかけられる可能性があるが、地下壕は複雑な構造になっていて、大砲が仲間で届かない構造になっているのである。
「よく考えたなあ」
「いや、そんなことを感心している場合ではない。ということは、間違った方を爆発させれば、我々が寄生虫にやられるということを意味するんだろ」
スネークは、一瞬何を言っているかわからないという表情をしたが、すぐに合点がいったように頷いた。
「さすが次郎吉さんだ。確かにそうだ」
「わかったか、ということはこれがあった場所にいて、どちらが緑でどちらが寄生虫なのか、見なければならないということだよな」
「そうだ、よし、それを見に行こう」
スネークもやっと合点がいったように、行動をした。
元のタンクの場所についてみると、確かに古い文字で薄く書いてある。ピンが赤い方が寄生虫で、黒いものが除虫剤と書いてある。そして、もう一つ黄色のものがある。
「黄色がある」
「黄色は・・・・・・えーと・・・・・・えっ」
そこの下に黄色のピンについて書いてある。
そこには「敵を一か所に寄せる」と書いてある。
「寄せるとは何だ」
次郎吉は、さすがにわからなかった。
「このピンを引っ張って投げてみればわかるのでは」
「でもここに集まってもらいたくないよな」
「そうですね」
先ほどは8本であったが、赤いピンのものを4本、緑のものを8本、黄色のものを4本二人で手分けした持った。
「よし、本陣に行こう」
二人は歩き始めた。次郎吉は、南海も来ているので地理に明るい。また、前回ここに入ってきたときに、様々な所に印をつけているので、どこ日本人があるのかもだいたいわかる。スネークはその後ろに付いてきて、周辺を警戒していた。
ところどころにゾンビがいた。地上とは異なり、一人で歩いているだけであったために、それほど脅威を感じることはない。スネークは、容赦なく落ち着いてサイレンサーを付けた銃でゾンビの頭を打ちぬき、安全を確保した。
「う、うわーっ」
本陣に近づくと、その本人の近くで声がした。
次郎吉はすぐに駆け寄ろうとしたが、スネークが手を引いて押しとどめ、そして口をふさいだ。そもそも、このような所に人がいること自体がおかしいのである。ここにいて、ゾンビに襲われて声を上げる人物というのは、ここに何かを取りに来た郷田の部下である可能性が極めて高い。そのような所に迷い込んでしまっては、三つ巴の戦いになってしまう。スネークはそれを避けようとしたのだ。
次郎吉も、一瞬助けを求める声なので、すぐに近寄ろうとしたが、スネークに手を引かれてやっと我に返った。スネークの方を振り向くと、ゆっくりと頷いた。
「次郎吉さん、俺が先に行ってみてくるから」
「気を付けろよ」
「馬鹿にするなよ」
スネークは笑いながら言った。
スネークは、銃を構えながら前に進むと、ゆっくりと前に進んだ。そして角を曲がってみた風景は、地獄絵図であった。郷田の所の若い衆と思われる人が二人、確かにその本部に探しに来ていた。しかし、そこにはゾンビになった人々が何人も集まり、その二人に襲い掛かっていたのである。一人は完全に、食いちぎられていて、もう一人は、まさに今、抵抗しながら5人のゾンビを相手位にしているところであった。
スネークはその若い衆と目が合った。若い衆は、当然に自分を助けてくれるものであると強く期待して、スネークの方に手を伸ばした。しかし、スネークは、にっこり笑うと、小さく手を振り、そのまま見ていた。
「お、おい、助けろよ」
若い衆は、必死に訴えた。しかし、スネークは全く助けようともせず、その二人がどこを捜索していたか見ていた。机の引き出しはだいたい開けられ、書類は散乱している。しかし、その中には確かに何もないような感じであった。
「おい」
スネークは、鼠の国の中でも「傭兵」といわれるものであった。暗殺をしたり、殺人を請け負ったり、場合によっては護衛を行うなどである。その為に、人の死には全く感情が動かされることはなかった。スネークはそのまま、その若い衆の首筋にゾンビが噛み付くのを見届けると、銃を構え、ゾンビ5人、そして若い衆二人の頭を全て打ち抜いた。脳に寄生虫が入り込んでゾンビ化しているのである。つまり、脳を壊せば、それが動くことはない。脳か、脳から体に信号が送られる延髄を狙えば、ゾンビは動かなくなるのである。スネークは、それをすでに会得していて、わざと殺されるのを見届けてから殺したのであった。
「次郎吉さん、終わりました」
次郎吉が隠れているところに来ると、スネークはにっこり笑った。
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