「宇田川源流」 「香港は死んだ」とネット上で書かれる香港の国家安全維持法と中国の国際公約違反における背景

「宇田川源流」 「香港は死んだ」とネット上で書かれる香港の国家安全維持法と中国の国際公約違反における背景

 「香港は死んだ」と書かれているのを見かけるようになった。香港とは、基本的には中華人民共和国の一部であるが「1997年7月1日」にイギリスから返還され、その返還において、50年間は一国二制度で高度な自治に置かれることが国際公約されていた。

さて、「高度な自治」「一国二制度」とはどういうことであろうか。

香港の問題を考えるときに、そのことをしっかりと認識しなければならない。香港の歴史を少し見てみれば清代から見ることができる。もちろんそれより前の状態も見える。しかしまあ表に出てくるのはその辺からだ。1699年(康熙38年)以降はイギリス東インド会社などが来航するようになり、1711年(康熙50年)には広州にイギリス商館が開設されている。イギリスは茶葉の大量輸入に起因する貿易赤字に対応すべく、インドからアヘンを輸出し販売を開始したが、アヘン輸入規制を推進する清朝とイギリスの間に紛争が発生した。1839年(道光19年)にアヘン戦争が勃発、1841年(同21年)1月20日にチャールズ・エリオット大佐率いるイギリス軍は香港島を占領した。そして翌年締結された南京条約により、香港島はイギリスに永久割譲された。

イギリスをはじめとした西欧列強による中国進出の圧力が強まる中、イギリスは清朝に迫り1898年(光緒24年)7月1日には九龍以北、深?河以南の新界地域の租借に成功した。この地域の租借期限は99年間とされ、1997年6月30日午後12時をもって切れることになっていた。中国大陸におけるイギリス資本主義の拠点となった香港では、イギリス政府による植民地統治機関である香港政庁のもとで、19世紀末から20世紀初にかけて華南貿易の基地として発展する。1984年12月19日、中英双方が署名した中英共同声明が発表され、イギリスは1997年7月1日に香港の主権を中華人民共和国に移譲し、香港は中華人民共和国の一特別行政区となることが明らかにされた。この中で中華人民共和国政府は鄧小平が提示した「一国両制」政策をもとに社会主義政策を将来50年(2047年まで)にわたって香港で実施しないことを約束した。この発表は共産主義の一党独裁政府である中華人民共和国の支配を受けることを喜ばない香港住民を不安に陥れ、イギリス連邦内のカナダやオーストラリアへの移民ブームが起こった。

「香港独立」の紙 持ち歩いただけで逮捕

1日に香港で行われた抗議活動で「香港独立」と書いた紙を持ち歩いただけでも「香港国家安全維持法」によって逮捕されていたことがわかりました。

 「香港国家安全維持法」に抗議する1日のデモにはおよそ1万人が参加し、警察はおよそ370人を逮捕しました。

 このうち、施行されたばかりの国家安全維持法で逮捕された人が10人いましたが、警察は公式サイトで詳細な情報を公表し、「香港独立」と書かれた旗をかばんに入れていた人や、「香港独立」と書き、イギリスやアメリカの旗などをつけた紙を持ち歩いていただけでも逮捕されたことがわかりました。

 この法律は反政府行為などを取り締まる目的で最高刑は無期懲役です。

 また香港に駐留する中国の人民解放軍は1日、「法律に従って職務を執行する」との声明を発表しデモ隊をけん制しています。

2020年7月2日 12時19分 日テレNEWS24

https://news.livedoor.com/article/detail/18508669/

外国人にも適用の国安法、香港の日系企業からも懸念の声

 【香港=東慶一郎】香港で反体制活動の取り締まりを強化する国家安全維持法(国安法)を巡り、香港の外国人社会で懸念が広がっている。

 国安法は、第34条で「香港住民でない者に法を適用するか、追放措置を取ることができる」と明記。さらに第38条では「香港住民でない者が香港以外の場所で行った犯罪にも法を適用する」と規定している。中国本土や香港の外で中国政府を批判した外国人が香港入りを拒否されたり、入境後に罪に問われたりする可能性がある。

 香港に進出している日系企業でつくる在香港の経済団体幹部は4日、読売新聞の取材に「国安法施行後、企業の本社から『香港は大丈夫か』と心配する声が寄せられている」と明かした。今後、日系企業が香港進出をためらうといったマイナスの影響があるのではと危惧する。

 その上で、この幹部は「外国人のどのような行為が違法とされるのかが明確ではない」と訴え、「中国本土で起きているような日本人拘束事件があれば、香港のイメージは大きく崩れてしまう」と話す。

 米企業からなる香港米国商会も2日、国安法について「東西の重要な玄関口として機能する、この都市の活力と利益に影響を与えないことを願う」との声明を発表。法解釈について香港政府と協議する場を持つ考えを表明した。

 香港紙・明報によると、民主派の立法会(議会)議員らも「外国人が香港に来るリスクが増し、投資意欲に影響を与える」(梁継昌氏)と指摘。香港の経済都市としての地位低下に危機感を示すなど、住民の間でも懸念が出始めている。

2020年07月04日 20時58分 読売新聞

https://news.nifty.com/article/world/worldall/12213-717496/

 香港返還の時に、多くの香港人はイギリス国籍の取得に走った。香港の人々はすぐ隣に中国があることから、中国共産党の恥部をよく知っていたのであろう。そのように考えると、イギリス国籍を取得しようとした人々が殺到したのもよくわかる。ある意味で、香港の人々は中国人を嫌っていたということかもしれない。このときイギリス政府は香港人のイギリス国籍取得を20万人を上限としたのである。

その後も、いや現在もそうであるが、香港人は「中国人」といわれることを嫌っている。基本的には香港人と中国人は別であるということを言っているのである。これは現在も同じであり、個の思想が少し過激になれば、「香港独立」となる。一方で、中国共産党の幹部は「海外のことをよく知らせたい」ということと「共産党の中の内部対立があまりにも大きいのでいつでも亡命できるように」ということから香港を通して外国籍をとるものも少なくなく、またその子弟を香港で学習させるような人が増えた。このことによって、香港の人々は、中国共産党の幹部の子弟というあまり優秀ではない人々の下に立たなければならず、またPTAなどのような集まりでも差別的な状況になってくることから、教育や、商業などの件であっても、中国共産党を嫌うようになっていった。党是rん位香港の学校に通う指定からそのような意見を聞くことが増えた共産党幹部は、香港の中国離れ(本当は共産党離れであるが)を危惧し、香港の取り込みを行うようになる。

胡錦涛政権の時には小学校や中学校の教科書を本土と同じにする、行政長官の指名選挙性など様々な「中国化」を行うのであるが、残念ながら、その都度香港では大規模なデモが起きるようになる。

その中でも有名なのが2014年の「雨傘革命」であり、そして2019年の、犯人引き渡し条約のデモである。そして2019年のデモが落ち着かない間に、「国家安全維持法」が気全人代で制定されてしまったということになる。

本来一国二制度というのは「国家は同じであるが、制度は異なる」ということである。しかし、政治制度が異なるということは当然に文化も異なるものであり、そのような気勉が通るのかは非常に疑問である。もちろん、もともと一国二制度とは、ニクソン大統領が台湾を飛び越えて周恩来と直接国交成立を行った時の便宜的な内容でしかなく、中華民国から中華人民共和国に国交をシフトするときの理論構成である。しかし、その中華民国、つまり台湾が解決できない状況において、一国二制度などということは全く考えられないのである。

しかし、その「机上の空論」だけが独り歩きをしてしまい、国家間の政府はそれで動いてしまう。そのために、結局のところおかしな話になり、その中で実質的に被害を被る民衆が大きな動きを行うことになるのである。

一方中国共産党内部においては、昨年10月の四中全会において、習近平派はかなり窮地に追い込まれた。動きとして胡春華が力を強め、そこへの禅譲を迫るような状況になってきていたのである。あと5年のうちに習近平終身で国家主席をすることなく、追放されるということまで来ていた。そのまきかうぇしでコロナウイルスをうまく使っていたが、それでは政治的なプラスはない。つまり他の国が全く動いていないコロナウイルス禍の中で、何ができるかということになっていたのである。

昨年の十月の四中全会で、習近平が求められたのは「米中貿易戦争の解決」と「香港デモの収攬」である。米中に関しては黒人人種差別デモを政治でも課することを行い、香港に関してこのような法律を作って収攬し、370人もの逮捕者を出したのである。

さて、日本の企業はどうするのであろうか。香港がこのようになってそれでも中国との関係を何とかするなどということを言い始めるのであろうか。そうであればかなりおかしな話になる。日本企業は「アメリカと中国のどちらを取るか」と一社一社踏み絵を踏まされることになるであろう。その時にどのような動きになるのか。いつまでも八方美人外交それも企業別の外交が許されるものではない。

日本企業の選択は、「香港の人々を弾圧した政府と組むのか組まないのか」ということを迫られることになるのである。

宇田川源流

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