「宇田川源流」【お盆特有のエロ】 至極のエロ話(7)生霊に取りつかれた男
「宇田川源流」【お盆特有のエロ】 至極のエロ話(7)生霊に取りつかれた男
「お盆特有のエロ」も最終回である。まあ、来年や他の時にやるかもしれないので、「とりあえずの最終回」という感じかもしれない。いずれにせよ、普段ならば「日曜小説」をかいているところ、今回は少々物語調で書きながらも、幽霊譚とエロのコラボを書いた。まあ、そもそも「うまく恋愛がいっている」場合、つまり「幸せなエロ」の場合は、子供が生まれてしまうのであるから、幽霊譚につながらない。幸せならば、幽霊にならず、成仏してしまうのである。つまり「何かが違って不満がある」から幽霊譚になるのである。では、その何が違ったのかということをふくめて、最後の話を書くことにしよう。
「恨みます。あなたはきっと私を振ったことを後悔します。」
みどりと別れた後、私の家のポストにそのようなことが書かれた手紙が入っていた。みどりとはうまくゆくと思っていた。初めのうちは明るいし、気立てはいい。何よりもきれいであった。しかし、使ってゆくうちにみどりの束縛が激しく、徐々に窮屈に感じていた。そして、仕方がなく先日別れを切り出したのである。みどりは、泣きながら私の前を去っていった。その後、会社の友人という人から連絡がありしばらくみどりが会社に来ていないことを告げられたが、別れた話をして、そのまま電話を切ったのである。
「なんだかな。まあ、仕方がないか」
私はそのように思いながら、その手紙をそのままゴミ箱に捨てた。持っていても仕方がないからである。
それからしばらくは何もなかった。そのうち、みどりと別れてから半年したくらいに、別な女性と付き合いはじめた。今度はあまり束縛のきつくない女性であり、また、みどりとの別れ話も知っているので、意識してあまり束縛はしないようにしてくれていた。
しかしある日、そんな彼女が、恐る恐る聞いてきた。
「ねえ、前の彼女、みどりさんって、今どうしているの」
「どうしてるって、わかるわけないだろう。もともと合コンで知り合って、会社も別なんだから。」
「いや、今日あなたの部屋に来た時に、みどりさんって思う女性が、あなたの部屋から出てきたのよ」
「まさか、あの時とはカギも変えているし」
「でも・・・・・・」
「ならば何かなくなっているものはあったかい」
「それがおかしいのよ。カギは閉まっていたし、何もなくなっていなかった。でも、玄関にこれが」
といって、彼女は長い少し茶色がかった髪の毛を、それも毛玉になるくらいの量を持ってきた。あまり気にしないとはいえ、まさか誰の髪の毛だかわからない髪の毛の玉をよく手で持てるなと思いながら、髪の毛を一本持ってみた。まあ、髪の毛だけで誰かのかわかるほどではなかったが、彼女はショートカットだから、そんなに長くはないのである。
「うん、確かに変だね」
「まさか、前の彼女って死んでたりするんじゃないの」
「そんな、テレビでやっているお化け話じゃあるまいし」
その日は笑って過ごした。
しかしその日が初めてだった。その日の夜。お互い仕事で忙しい彼女と二人で過ごしていて、そのままベッドに入った。
「キャーッ」
彼女が突然、悲鳴を上げた。そこには信じられない光景があったのだ。二人でベッドに入ったので、二人とも全裸であったが、もう一人、全裸の女性がいたのだ。
「あなた誰よ」
「あなたこそ、だれなの」
二人の女性がにらみ合っている。一人は彼女、そしてもう一人は「みどり」なのである。
「みどり」
「えっ、この人がみどりさん」
彼女が驚いて、つかみかかろうとすると、みどりの体を手がすり抜けてしまった。そしてみどりは消えてしまったのである。
「ねえ、怖い」
「ああ、明日調べてみよう」
翌日、彼女のいる前で、みどりと別れたときに電話をかけてきた緑の友人に電話をしてみた。みどりは、別に自殺などもしていないし、また、悲しみに暮れているようではあるが、それでも普通に仕事に来ているという。ただしたまに何か魂が抜けたようになる時があると教えてくれた。
その日の晩、彼女と夜の営みをしていると、いつの間にか、彼女の声が変わり、徐々にみどりの声になっていった。そして顔もみどりの顔、ベッドに残っている髪の毛も、玄関に落ちていたのと同じ、長い髪の毛が何本も落ちていたのだ。昨日、気持ちが悪いといって、彼女が洗濯したばかりなのにである。
「きっと生霊ね。何とかしないと取り憑かれちゃう」
彼女はそういうとその髪の毛をもって信用できる寺に行った。
「取り憑かれていますね。魂がストーカーのようにあなたの方に捕まっています」
初老の僧侶は、そのようなことを言い、髪の毛を供養した後燃やした。そして、そのあとお札をくれたのである。
「しばらくは大変だと思いますが、頑張ってください」
月に一回、そのお寺に通いながら、一年くらいするとやっとみどりの影がなくなった。しかし、それまでは、彼女とみどり、両方の女性が常にいたような感じであった。
そして時がたち、彼女と私は結婚することになった。結婚式も無事に終わり、そして、様々な友人のメッセージを確認していると次のようなものがあったのである。
「結婚おめでとう。今度はあなたの子供としてあなたのそばにいるようにしますね。いつまでも愛しています みどり」
いや、女性の執念は恐い。みどりさんは、生きているし、当然に彼の結婚式に来ていないのである。実際に、その日はみどりさんは友人と旅行に行っていたので、結婚式に出席などができるはずがない。どうしてそんなメッセージカードが入っていたのか全く分からないということである。それでも、実際にそのカードはあるのだ。死んでしまった霊は、その時点の欲望が満足されればよいが、生霊は時間とともに欲望も変化してくるのである。それに対応しなければならないから困る。そのうえ生霊を飛ばしている本人が全く気付いていないので、本当に困るのである。
ある意味で、そこまで愛されていたということなのであるが、しかし、困りものであることは間違がないのである。
さて、今日で「お盆特有のエロ」は終わりにする。明日からまたいつも通りのブログに戻します。
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