「宇田川源流」 大河ドラマ「いだてん」が視聴率の最低を更新してしまったことからみる日本人の大河ドラマに期待するもの

「宇田川源流」 大河ドラマ「いだてん」が視聴率の最低を更新してしまったことからみる日本人の大河ドラマに期待するもの

 大河ドラマに関して、今年の視聴率があまりにも低すぎると話題なっている。実際に、大河ドラマの最低視聴率を日々更新しているという感じだ。すでに6月になっているが、実際に、半年で徐々に下がってきているというのはいかがなものであろうか。

さて、ではなぜこのようなことになってしまったのであろうか。

今までも何回か今年の大河ドラマに関しては様々書いてきた。そこは何が問題なのかということを書いてきたつもりであるが、もっとも多いなものは「国民(NHK大河ドラマの視聴者)の期待に応えられる内容のものではなかった」ということではないかという気がする。

大河ドラマは歴史を扱うものであるから、当然に歴史に忠実でなければならない。しかし、一方で「歴史に忠実ではならないものの、100%歴史通りでなければならない」というものではないのである。要するにNHK及び、今回の脚本家の宮藤官九郎やそのほかのスタッフが、「歴史を小説やドラマにする方法」が今ひとつわかっていなかったのではないかという気がしてならないのである。

「何を偉そうに言っているのか」ということを言う人がいる。しかし、実際に、こちらも視聴者であることは間違いがなく、その中の意見はある。そしてその中に関して単純に批判をしているのではなく、何らかの形で直せばよくなるということを意見を言うことに何のためらいがあるであろうか。

そのように考えた場合、何が最も重要かということがわかるのではないか。

そのような思いでこれを書いてみる。

NHK「いだてん」危険水域 大河最低更新6・7%

 NHK大河ドラマ「いだてん 東京オリムピック噺」(日曜午後8時)の第22回が9日に放送され、関東地区の平均視聴率が6・7%(関西地区6・0%)だったことが10日、ビデオリサーチの調べで分かった。

 4月28日放送の第16回で大河ドラマ最低の7・1%を記録したが、この数字を0・4ポイント下回り、大河ドラマ史上ワースト記録を更新してしまった。関東地区で大河ドラマの平均視聴率6%台は初めて。

 9日の放送では、四三(中村勘九郎)の熱血指導によって東京府立第二高女の女学生たちがスポーツに打ち込み、教え子の富江(黒島結菜)たちが全国的なスポーツアイドルとなる内容が描かれた。また、日本人女性離れした見事な体格の人見絹江(菅原小春)も登場した。

日刊スポーツ2019年06月10日09時20分

https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/nikkangeinou/entertainment/f-et-tp0-190610-201906070000336

 さて、私はいつも小説作家として何らかの講演を行うときに、このようなことを言う。

「歴史小説作家とは、壮大なる嘘つきであり詐欺師なんです。ですから、これからいうことも基本的には嘘つきが壮大なファンタジーを語っているので会って、歴史の話をしているとは思わないようにしてください」

 さて、なにも私が嘘つきであるといっているのではない。そこで私ではなく、もっと有名な歴史小説の大家である吉川英治先生の話を出す。

『 ――どうなるものか、この天地の大きな動きが。

 もう人間の個々の振舞いなどは、秋かぜの中の一片の木の葉でしかない。なるようになッてしまえ。

 武蔵たけぞうは、そう思った。』

吉川英治先生の代表作「宮本武蔵」の地の巻の冒頭である。これは関ケ原の合戦の後のことであるが、あえて聞く。関ケ原の合戦の後「宮本武蔵がこのように思った」ということはどの資料を調べればわかるのであろうか。答えは「なし」である、つまり、この冒頭の部分は、何の資料にも載っていない、吉川英治先生の頭の中のファンタジーでしかないのである。

基本的に歴史小説というのは、「小説」としての体裁を整えている。そこで、資料や歴史の流れに従いながらも物語性を重視している。その歴史小説作家の物語性と、多くの人の持っているイメージとが交錯して、その中で新歴史上の人物像が出来上がってゆくことが楽しいのだ。

そのうえで、そのその人物像の「考え方」や「人間としての深み」場合によっては「喜怒哀楽」「身近な人の死」「自らの生氏の境をさまよった経験」など、究極な場面での経験をもって、その時の選択やその時の考え方を現代に生きる自分になぞらえて、自分の生きている中の指針としてゆくのである。当然に、自分の頭の中で作ったイメージであるから、例えば明智光秀としても、そのイメージは一人ひとり異なるものであり、なおかつ自分の頭の中で作っていることから、その面白さが出てくるのである。

それらのことを「共感」というのであるが、まさにその共感がないことが最も大きなものではないのか。

「単なる娯楽作品」というような言い方をする批判をよく見かけるが、まさに「男性現役世代に対する共感」があまりないのかもしれない。

さあ、来年の大河ドラマに期待することになるのではないか。

宇田川源流

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