「宇田川源流」【日本報道検証】 ウイグルの強制労働を是認していると12.5%の関税をかけるアメリカと中国の関係

「宇田川源流」【日本報道検証】 ウイグルの強制労働を是認していると12.5%の関税をかけるアメリカと中国の関係


 毎週火曜日と木曜日は、「日本報道検証」として、まあニュース解説というか、またはそれに関連するトリビアの披露とか、報道に関する内容を言ってみたり、または、報道に関する感想や社会的な問題点、日本人の文化性から見た内容を書き込んでいる。実際に、宇田川が何を感じているかということが共有できれば良いと思っているので、よろしくお願いいたます。

 さて今回は、「ウイグルの強制労働を是認していると12.5%の関税をかけるアメリカと中国の関係」と題して、基本的に「関税」の問題なので、昨年のいわゆるトランプ関税の延長線上に今回の関税があるかのように見えていますが、実際は全く異なるものではないということになるのではないでしょうか。今回の関税を「ウイグルの強制労働」ということになりますが、一方で、ウイグルの強制労働を問題視するということで「間接的な経済制裁」をするということが興味深いということになります。

今回の内容は、米中が直接経済制裁を行っているというものではなく、中国のウイグルの強制労働をしたことを認めその中国と取引をしている国に対して関税をかけるということです。つまり、日本を含めた国々は、単純に「中国と取引して12.5%の関税をそのまま受け入れる」か、あるいは「中国との取引をやめるか」という選択肢を選ばされることになり、そのうえで、中国との関係を考えなければならないということになるのです。これは、ウクライナを攻撃したロシアと天然ガスを輸入していたインドに対して関税をかけるというのと同じではないでしょうか。

日本にとっては大きな問題かもしれませんが、しかし、今回の関税は昨年の石破政権において赤沢大臣が適当に交渉をしていたのとは全く異なることになります。

<参考記事>

トランプ政権、日本はじめ60カ国に対する最大12.5%の新関税案 ウイグルなど強制労働めぐり

6/4(木) 7:00配信 Forbes JAPAN

https://news.yahoo.co.jp/articles/8cc114ec8595073269bf749b1deeb81688dc82db

中国がいくら検閲しようと天安門事件「抹消」できない 米国

6/4(木) 8:04配信 AFP=時事

https://news.yahoo.co.jp/articles/cf1cab53056da2b6b8132efbbe06cb666feae237

<以上参考記事>

 現在の米中関係は「協調と対立が同時進行している状態」と見るのが最も実態に近いと思われます。

 まず事実関係として、アメリカ通商代表部(USTR)は、中国だけでなく日本や韓国、インド、ブラジルなどを含む60の経済圏に対し、強制労働対策が不十分であることを理由に10~12.5%の追加関税を提案しました。中国はその中でも12.5%の対象に含まれています。

 また、天安門事件の記念日に際して、アメリカの Marco Rubio 国務長官は、中国政府による民主化運動弾圧を改めて批判し、「歴史は消し去れない」との声明を発表しました。これだけを見ると、米中関係は悪化しているように見えます。しかし、もう少し深く見ると、アメリカは中国との全面対決を目指しているわけではないことも見えてきます。なぜなら今回の関税は、中国だけを狙ったものではなく、同盟国である日本や欧州諸国も対象だからです。これは「反中国制裁」というよりも、「アメリカ主導の新しい貿易ルールへの参加を求める圧力」と理解した方が実態に近いでしょう。

 つまりワシントンは、「中国との関係は維持する。しかし中国を含む世界経済のルールはアメリカが決める」という姿勢を強めているのです。一方、中国側も興味深い動きをしています。中国は米中首脳会談で対話を継続しながら、その直後に習近平国家主席とプーチン大統領の首脳会談を行い、国際秩序やアメリカ主導体制への批判を続けています。

 これは中国外交の伝統的な「両面戦略」です。アメリカとの経済関係は維持したい。しかし、安全保障ではロシアとの連携を強めたい。さらにグローバルサウス諸国には「米国中心ではない世界」を訴えたい。そのため中国は米中首脳会談で協調を語りながら、ロシアとの関係では対米牽制を続けるという、一見矛盾した行動を取っています。そして今回の関税措置は、まさにその中国の行動に対するアメリカ側の警告と見ることもできます。

 アメリカ国内では、中国との関係改善を主張する勢力と、中国への圧力を強めるべきだとする勢力が共存しています。特にルビオ国務長官は、中国共産党に対して極めて強硬な立場で知られており、人権問題や台湾問題、宗教弾圧問題について妥協しない姿勢を取っています。天安門事件への言及もその延長線上にあります。そのため現在のアメリカ政権内部には、「中国との戦争は望まない」「しかし中国の台頭を無条件には認めない」という二つの考えが同時に存在していると見るべきでしょう。結果として現在の米中関係は、冷戦時代の米ソ関係とも少し異なります。

 軍事的には対立。経済的には依存。外交的には競争。気候変動や金融問題では協力。という極めて複雑な関係です。したがって、今回の関税措置やルビオ長官の発言をもって直ちに「米中首脳会談は失敗した」「米中関係は決裂した」と判断するのは早計です。むしろ現実には、「首脳同士は対話を維持する」「経済では競争する」「安全保障では対抗する」「価値観や人権では妥協しない」という、多層的な競争関係が続いていると考えられます。

 言い換えれば、現在の米中関係は「和解」でも「新冷戦」でもなく、「管理された戦略的競争」の段階にあると見るのが最も妥当でしょう。そして今回の関税問題は、中国がロシアとの連携を強めていることや、アメリカが中国への技術・経済依存を減らそうとしている流れの中で起きたものであり、米中首脳会談後の蜜月を示すものではなく、「対話はするが圧力もかける」というアメリカの基本方針を示していると考えられます。

 このような状況で、日本はどのようにすればよいでしょうか。

中国との経済的な関係を継続すればアメリカとの取引の関税が上がりますし、一方で中国との貿易を全て止めることは難しいでしょう。そのように考えれば、日本の経済と日米関係の政治的な内容を考えれば何をすればよいでしょうか。

「中国との経済関係を維持すればアメリカ市場で不利益を受ける」「しかし中国市場を完全に捨てることもできない」という状況が本格化するならば、日本は従来の『曖昧なバランス外交』から『戦略的な選択と分散』へ移行しなければならないでしょう。ただし、それは中国との関係断絶を意味しません。

 日本にとって最大の問題は、中国が隣国であり、世界第二位級の経済規模を持ち、日本企業の重要な市場であることです。同時に、日本の安全保障は事実上アメリカとの同盟によって支えられています。この二つは同じ重さではありません。経済的には中国が重要でも、国家の存立という観点では日米同盟の方が優先順位は高くなります。

 なぜなら、中国との貿易が減少しても日本は存続できますが、日米同盟が機能不全になれば東アジアの安全保障環境そのものが大きく変化するからです。したがって、日本がまず行うべきことは、中国依存の縮小であって、中国との断絶ではありません。

 例えば半導体、レアアース、医薬品原料、蓄電池材料、通信機器など安全保障に関わる分野では、中国一極依存を避ける方向へ進めるべきでしょう。一方で衣料品、一般消費財、民生機器など安全保障と直接関係しない分野まで全面的に切り離す必要はありません。これは近年アメリカが使う「デカップリング(切り離し)」ではなく「デリスキング(危険低減)」という考え方に近いものです。

 さらに重要なのは、日本が第三の市場を育てることです。これまで日本企業は「アメリカか中国か」という二者択一で考えがちでした。しかし本来は、インド、ベトナム、インドネシア、フィリピン、さらにはサウジアラビアやアラブ首長国連邦などへの投資を加速し、市場を多極化する必要があります。中国市場が重要だからといって、中国市場しかない状態こそが危険なのです。

 政治面では、日本はアメリカに対して単なる追随ではなく、「信頼できる同盟国」として振る舞う必要があります。そのためには強制労働問題、人権問題、知的財産権問題などについて、日本自身の基準を明確に示すことが重要になります。これは中国批判のためではありません。むしろ日本独自の価値基準を持つことによって、「アメリカに言われたから従う」のではなく、「日本自身の原則として行う」という立場を作れるからです。

 また中国に対しても、日本は感情的な対立を避けるべきでしょう。歴史的に見れば、中国は長い文明国家であり、地理的にも切り離せない隣国です。日本が本当に避けなければならないのは、中国との対立そのものではなく、中国依存とアメリカ依存の両方を過度に深めることです。

 理想的には、アメリカとの同盟を安全保障の基軸としながら、中国とは経済交流を維持し、その上で第三の市場を拡大するという三層構造になります。今までの日本は「アメリカにも中国にも良い顔をする」ことで利益を得てきました。しかし米中対立が構造化した現在、そのやり方は確かに難しくなっています。

 これから求められるのは曖昧さではなく、「安全保障は日米同盟を基軸とする」「経済は多極化する」「中国とは必要な協力を続ける」という優先順位を明確にした国家戦略です。言い換えれば、日本はもはや米中の間に立つ『中立国』を目指すのではなく、日米同盟国でありながら中国とも対話できる『橋渡し役』を目指す方が現実的でしょう。そのためには外交力だけでなく、国内産業の強化、エネルギー安全保障、技術開発、人材育成を進め、「どちらか一方に依存しなくても成り立つ日本」をつくることが、最終的には最も重要な課題になると考えられます。

宇田川源流

「毎日同じニュースばかり…」「正しい情報はどうやって探すのか」「情報の分析方法を知りたい」と思ったことはありませんか? 本ブログでは法科卒で元国会新聞社副編集長、作家・ジャーナリストの宇田川敬介が国内外の要人、政治家から著名人まで、ありとあらゆる人脈からの世界情勢、すなわち「確実な情報」から分析し、「情報の正しい読み方」を解説します。 正しい判断をするために、正しい情報を見極めたい方は必読です!

0コメント

  • 1000 / 1000