小説 No Exist Man 2 (影の存在) 第三章 動乱 24

小説 No Exist Man 2 (影の存在)

第三章 動乱 24


「何が起きた」

 周毅頼は、徐平乗務員と一緒に中南海の執務室にいた。

「厦門がミサイルを、それもウイルスの混ざったミサイルを北京に放ってきました」

「孔洋信が、追い詰められると何をするかわからんな。」

「いえ、それよりもミサイルの一部が陸軍の微生物研究所に命中しまして、あの中の微生物もすべて拡散しております。」

 張延は、

「それよりも主席。ウイルスが迫っておりますので、瀋陽に避難願います。」

「うむ」

 中国共産党は、北京に何かあった場合に、いくつかの避難先をあらかじめ選定していた。意外に知られていないが、海から攻められた場合は重慶、や西安。また北のロシア、旧ソ連が攻めてきた場合には、南京。などがその候補に挙がっており、その場合の司令部などもしっかりと整備されていた。その中の一つで、病原菌や疫病が首都を汚染した場合には、東北参照の一つ遼寧省の省都である瀋陽をその中にしていた。瀋陽は北方であり、冬には氷祭りを行うほど冷え込むことからウイルスなどの活動があまり活発化しないということが一つの理由である。

 瀋陽は、清朝初期には盛京(当時の松山城)として皇帝の陪都に位置づけられ、1644年に北京へ都が移されたのちも重要拠点として残った。1657年には奉天府が置かれ、この頃から「奉天(Fengtian)」の名で呼ばれるようになる。このように基本t系には北京に代わる首都機能をしっかりと残していた。19世紀末から20世紀初頭にかけては日露戦争や列強の横断鉄道建設などで列強の争奪地となりましたが、辛亥革命後の混乱を背景に、1923年には奉天派の実力者・張作霖が奉天市政公所を設置し、奉天を東北全域の軍政拠点としたことでも有名である。1928年12月29日、張作霖暗殺後に張学良が東北易帥を宣言して奉天を中華民国政府直轄下とし、翌1929年には市名を「瀋陽市」と改めた。しかし1932年3月1日、満洲国の成立と同時に再び市名が「奉天市」に改称され、以後1945年の日本敗戦まで満洲国奉天省の省都として存続している。

 瀋陽はかつて中国人民解放軍の七大軍区の一角を成し、約25万~47万の正規兵および民兵を擁して東北三省と中朝国境の防衛を担っていた。2016年の軍区再編で「北部戦区」に統合された現在も、4個集団軍のほか遼寧省軍区直属の旅団や2個の武装警察師団など多層的な部隊編成を維持し、北東アジアにおける地政学的安全保障の拠点として機能している。瀋陽を拠点とするこれらの部隊は、朝鮮半島情勢やロシア極東からの潜在的脅威に即応可能な機動戦力を保持し、陸海空の連合作戦能力を向上させることで地域の安定と中国東北部の防衛を固めている。

 また瀋陽の近くの寿春の待ちには、北部戦区の補給基地と大規模なミサイル基地がある。そもそも、北京の代わりになる都市の近くには核ミサイルの基地があり、何かがあれば核ミサイルで反撃できるような状況になっているのである。そのように考えれば、瀋陽の代理首都はこの時には最も良い選択であった野田。

「ヘリコプターが来ております。」

 中南海には3機のヘリコプターが来ていた。これは避難のマニュアル通りであり、3機のヘリコプターのうち、一機に国家主席が座上する。そして一機がそれを護衛するのであるが、もう一機は囮として、国家主席が座上しているかのようにふるまうのである。

「2号機に私が乗る。1号機に張延、3号機に徐平が乗るように」

 周毅頼は軍の関係者にそのように支持した。要するに張延に囮をさせたのである。そのうえでヘリのパイロットにこのように指示した。

「囮として北京上空を飛んだ後に、もう一度中南海に戻り、張延に近衛師団を指揮させるように。北京に常務委員が一人もいなくなるのは良くない。張延が何を言っても、その命令を違えるな。」

 本人に言うことなどはすべて聞かずに、張延を連れて戻れということを支持したのである。ヘリのパイロットは、敬礼してヘリに乗り込んだ。

「さて、どうしたものか。」

 ヘリコプターを差し向けた後の何華将軍は頭を抱えた。

 反乱軍が、病原菌のことを知っているかのように、ミサイル攻撃の後突然北京市郊外に非難し始めたのである。初めはミサイルの爆音などで軍を引いたのかと思った。しかし、北京市内の無事であった民衆たちも引いていったのだ。

「おい、SNSを検査してみろ。何か手がかりがあるのではないか」

「はい」

 部下は、手がかりを探してSNSを検索したが、そのような内容は何もない。いや、周毅頼と徐平の二人の常務委員が国務院に指示してSNSの新規の書き込みをすべてなくしてしまったのである。SNSは数日前に全て新規の書き込みができなくなっているのである。

「ではなぜ、なぜあいつらはウイルスのことを知っているのだ。」

 何将軍は頭を抱えた。

 全員が防護服を着ているので動きは少し緩慢になっている。

「マララさん」

 安斎は、マララに声をかけた。マララたちは旧西部戦区の司令部に入っていた。当然に、ここから無線を支給し、そして周波数を変えた上で、反乱軍の各部隊に渡していた。そして、何かあった場合には緊急で連絡をするということになっていたのである。

「南のミサイルは、ウイルスがあるということなのでしょう。その様に連絡してあります。」

「南の基地がミサイルを北京に向かって撃つはずがない。」

「つまり、あれは」

「ああ、沖田進、いや荒川さんが撃ったミサイルだ。つまり、死の双子を積んだミサイルだ。そのうえ、荒川ならば、北京の微生物研究所も撃っているはずだ。なるべく多くの北京市民も避難させるべきだろう」

 マララは何も言わずにそのような通信をした。

「こちらはうまくやっているよ」

「ああ、見ている」

 太田とワンが、かわるがわる無線に出てくる。太田や荒川は、上海にいる。上海はワンのマフィアが支配しているので安全なのである。

「周毅頼が瀋陽に逃げた。」

 安斎はそういった。

「なるほど、では次の作戦に移ろう」

宇田川源流

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