「宇田川源流」【大河ドラマ 光る君へ】 平安女性の生き方のサンプルからまひろが心を開く「物語の伏線」
「宇田川源流」【大河ドラマ 光る君へ】 平安女性の生き方のサンプルからまひろが心を開く「物語の伏線」
毎週水曜日は、大河ドラマ「光る君へ」の感想を書いている。感想というのはなかなかおもしろいもので、様々な人のSNSの内容を見ていると、同じシーンでも見方が全く違う地う感じがおもしろい。
今回はききょう(ファーストサマーウイカさん)が「清少納言」と言われるようになったことと、藤原道綱(上地雄輔さん)がまひろ(吉高由里子さん)と間違えて、さわ(野村麻純さん)の所に夜這いに行ってしまうというところがうまく書かれているある意味で「恋焦がれている女性たちが、会えない寂しさをどのように過ごしているのか」という女性心理をうまく書いた作品になっている。このように書くと、石山寺のシーンばかりに目が行きがちであるが、実際には、ききょうが「清少納言」と言われるようになった瞬間も、「親も子もなく、主人とも別れました」というような発言をしているということから、実際には、「恋しい人と別れて定子のところに女房として使えるようになった」ということが描かれている。
その前に、簡単に「さわ」のことを書いておこう。「さわ」は「平維将の娘」であるという説が強い。あくまでもドラマなので、基本的には「紫式部の友人でありなおかつ異父兄弟であり、良き相談相手」というような感じであろう。その意味ではモデルは一人ではなく、さまざまな「紫式部周辺の人物の集合体」かもしれないと思う。
さて、その「平維将の娘」は、一応残っている歴史によると、維将の娘は紫式部の親友である"筑紫へ行く人のむすめ"ということになる。平維将は、後の鎌倉幕府の執権北条氏の祖と言われる人物で、基本的には武将であり貴族というような感じではない。今回の「光る君へ」の中で書かれている貴族は馬にも乗り、弓比べも行うというような感じで、なかなかたくましい人物が多いのであるが、屋はしそのような感じの人物であろう。
この平維将の娘は、正暦5年(994年)盗賊捜索の功により翌年肥後守に任じ、父と一緒に肥後(現在の熊本県)に移り住むことになり、別れの際には贈答歌を詠んでいる。ちなみに、維将の妻は式部の伯母ということもあり、現在のドラマの中のさわと境遇が似ているという感じではないか。ちなみに、平維将の娘は紫式部と再会することなく肥前で亡くなった。
光る君へ:「失礼すぎる」道綱、“夜這い”相手間違えて「あれ?」 さわとまひろの友情に亀裂か 視聴者も「許すまじ…」
俳優の吉高由里子さん主演のNHK大河ドラマ「光る君へ」(総合、日曜午後8時ほか)の第15回「おごれる者たち」が、4月14日に放送され、まひろ(吉高さん)とさわ(野村麻純さん)の“石山詣(もうで)”が描かれた。
第15回では、道隆(井浦新さん)は、強引に定子(高畑充希さん)を中宮にし、詮子(吉田羊さん)を内裏の外へと追いやった。その2年後、一条天皇(塩野瑛久さん)は麗しく成長。道隆の独裁には拍車がかかっていた。伊周(三浦翔平さん)らに身内びいきの人事を行い、定子のために公費を投じ始める。兄のやり方に納得がいかない道長(柄本佑さん)。
一方のまひろは、さわと近江の石山寺へと出かける。そこで出会ったのは、まひろも幼い頃から愛読してきた「蜻蛉日記」を記した藤原寧子(財前直見さん)と一人息子の道綱(上地雄輔さん)だった。
その夜、道綱は“夜這い”する相手を間違えてさわのもとへ。道綱を一目で気に入っていたさわは、道綱を受け入れようとするが、道綱は自分が抱こうとしている相手がさわだと分かると、「あれ?」「すまぬ」「間違っておった」と失礼な発言を連発。さわの名前すら出で来ず、さわを悲しませた。
このことをきっかけにさわとまひろの友情にも亀裂が。石山寺へと向かう途中、立ち寄った河原では、さわがまひろに「私たち、このままずっと夫を持てなければ、一緒に暮らしません?」と提案し、まひろも「それはまことによいかもしれません」と答えていたが、帰りの道では、さわはまひろの前で「私には才気もなく、殿御を引き付けるほどの魅力もなく、家とて居場所がなく……もう死んでしまいたい!」と不満を爆発させた。
SNSでは「ひどっ、道綱ひどっ」「道綱…マジか」「失礼すぎるぞ!」「斬られても文句いえぬぞ」などと視聴者は反応。「さわさんいい娘さんなのにね」「さわちゃん可愛そうだな」「道綱ぁ…今までは癒やしと思うていたが許すまじ…」「えー! これでズッ友に亀裂入るのー。なにしてくれてんねーん!」「道綱、いいヤツなんだけど残念だなぁ」といった声も上がっていた。
2024年04月14日 MANTANWEB編集部
https://mantan-web.jp/article/20240414dog00m200024000c.html
さて、今回の物語に戻ろう。
今回の物語は、珍しく「まひろの心の声」が、吉高由里子さんのナレーションで入った。ある意味で、表情や情景だけではそのへんかを伝えきれないという状態であり、なおかつ、その心の変化が重要であったということになる。
では、なぜそれが重要であったのか。
今回は、まるで「これから就職をする大学生が、色々な職業の人や転職に失敗した人などの代表者と別々にあって、そのひとり一人との心の動きをしっかりと見ていた」ということになる。
初めは、「弟に期待をする姉」としての自分自身そして
「自分の才覚を活かす為に、夫も子供も捨てたききょう(後の清少納言:ファーストサマーウイカさん)」
「父に甘やかされ、公費で全て賄うことが当然と思ってしまう中宮藤原定子(高畑充希さん)」
「家族中が悪いことで、皇太后でありながら自分の息子の天皇とはなれ権力の座から遠ざけられた藤原詮子(吉田羊さん)」
「身分が低い家に生まれたので、誰とも恋ができないさわ」
「妾である立場から、心と体が別々になってしまい、そのことを文章を書くことによって解放させた藤原道綱の母(財前直見さん)」
と、様々なタイプの男性との関係や家族との関係を見ることができ、その一人一人の内容を見ながら、吉高由里子さんのナレーション(まひろの心の声)が入る。そして蜻蛉日記の内容を聴いて、そのことから、多分文章で自分の気持ちを書くこと、そして開放することに踏み込むということになるのであろう。まさに、当時の女性の生き方のサンプルを見て、まひろが生き方を選ぶという、壮大な「伏線」であり、この人々を思い出すことによって、源氏物語の様々な物語の登場人物になってゆくということなのであろう
その間に、男性の方も様々な動きがある。関白藤原道隆(井浦新さん)は、体調が悪いとしながら、息子の伊周の弓比べで不穏な将来を察知し、順風満帆な自分の運命に影が差し始めている。また、道綱は、夜這い先を間違うというこれまた、なかなか彼らしいエピソードをつくる。それも「寺の中で」である。
まあ、様々な人間模様が書かれ、そしてそこに「疫病」が次の段階に持ってゆくという、なかなか面白い展開になっているのではないか。
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