小説 No Exist Man 2 (影の存在) 第一章 再来 4
小説 No Exist Man 2 (影の存在)
第一章 再来 4
「大沢と陳だけで何をやっていたんだ」
菊池綾子から話を聞いた荒川は、頭をひねった。もちろん、京都のテロから指名手配をされている松原隆志が簡単に出てくるとはさすがに思わない。しかし、それであるならば、何らかの形で連絡が尽きていtるはずではないか。テレワークか何かで奉天苑と日本紅旗革命団とつないでいるのかもしれない。まあ、そのように考えるべきであろう。では他に誰がつながっているのか。
前回の京都での天皇暗殺計画では、日本にいるすべての「反日主義者」が集まったといっても過言ではなかった。そのうち、来ようとの北朝鮮人の集団の金日浩は逮捕されている。しかし古い活動家である大津伊佐治、大学の研究室にいたが事件以降行方不明になっている山崎瞳などがまだ残っている。それに金日浩の後継者もいるに違いない。
そして、それだけの人が集まっているとすれば、「もう一度天皇暗殺や大規模のテロを計画している」と言うことになるのだろう。
「もう一つ気になることがあるのです」
菊池綾子は、東銀座のビルの二階の事務所で荒川に言った。
「もう一つ」
「はい、マサからの連絡では、大沢はあまり浮かれた顔をしていなかったということと、出る時に見送った従業員らしき人が、多分軍人であったというような事なの」
「軍人だって。マサはどうしてそう思ったんだ。」
日本には軍人はいない。もちろん自衛官はいる。しかし、自衛官は自衛官でしかない。中国人民解放軍の軍人とは全く異なるものである。マサはなぜそのように「見たこともない軍人」を見分けることができたのか。荒川はその点が疑問であった。もしかしたら、警備員かもしれないしまた日本の自衛官を参考にしているだけかもしれない。
「その辺はよくわからないけれど、でも今までの陳とか、そういった人とは全く毛色が異なる感じだったことだけは確かじゃないかしら」
「つまり、中国共産党が本腰を入れてきたという事か」
「そうだと思う。何しろ国務院の総理を殺されたということになるんだから」
「そうだな」
荒川は、すでに湯気がでなくなったコーヒーを口に含んだ。
「何かが違う。少なくとも順調に何かをやるちうような話ではない。」
その時に、
「お久しぶりです」
事務所に女性と男性が入ってきた。
「洋子さん」
小川洋子である。京都の根拠地であるバー「右府」のオーナーであった平木正夫の娘である。もともとはインフルエンサーであった。平木正夫が金日浩に殺された後、このチームに入りバー「右府」を受け継いだ。このチームの京都のリーダーになる。
「その人は」
荒川は、小川洋子にもう一人の男性について尋ねた。
「この人は葛城博久さん。元自衛隊の一佐でこの前まで福知山の連隊に所属していたの。特殊部隊にいた人で柔道は5段、剣道4段、柔剣道4段、空手2段の合わせて15段だって」
「合わせるのか」
荒川は、ちょっと笑いがこぼれた。緊張するような内容ばかりであったので、ちょっとのことが余裕を生むことになる。
「はい、それだけではなく、自分は別班にいましたので」
「別班」
「はい」
「別班行動は、一人だった」
「いや複数の時もありました。」
葛城は、もともと別班、つまり自衛隊の潜入捜査のようなことをやっている。つまり、その潜入個所においてなりきらなければならないのである。葛城は、自衛官らしくない状態え入ることができるということになるのである。
「それはありがたい」
「もう一人、藤田さんという人もいます。でも、その人は今回は来ていないの。」
藤田伸二、現職の自衛官別班の人である。今は任務が一つ終わっての休暇中であるという。
「ちょっといいかしら」
今度は今田陽子首相補佐官が入ってきた。
「嵯峨殿下や東御堂殿下は」
「今日はまだ来ておりませんが」
荒川は答えた。
「外務省に中国から外電があったのよ。李首相を警備できなかった賠償金として300兆円を請求してきた」
「えっ。300兆円。国家予算の3年分を超えているではないか。ばかげている」
「でしょ。」
「それで阿川首相は」
「もちろん断るって。非公式の申し出だから断るのはそんなに難しくはないけど、多分中国は、日本は李首相を殺しておいて賠償金も断ったと宣伝するでしょう。あそこはそういう国」
今田は吐き捨てるように言った。
「確かにそのような国ですね」
葛城は早速その話題に入った。
「あなたが葛城さん」
「はい」
「今田です。よろしく。それで、そのように宣伝されないようにこちらで考えないとならないの」
「政府は大変ですね」
荒川もうんざりするように言った。
「本当よ」
「それに対して、昨日、陳文敏と大沢三郎が二人で会食しています」
「奉天苑」
「そうです。大沢はあまり心地よい内容ではなかったようで、不快そうな表情をしています。他のメンバーは入っています。そして奉天苑には、軍人らしき人がいるようです。」
荒川は菊池綾子がたった今報告してくれた内容を手短に伝えた。
「もう一回テロを起こすという事かしら」
「まだわかりません」
「綾子さん、また青木優子先生に話を聞いてみないとならないわね」
菊池綾子の方に、話を振った。
「そうね。でも突然連絡を取ると困るし、大沢三郎がどんな反応をするか聞いてもらってからの方がいいから、少し時間を置くわね」
「さて、中国は本当は何を狙っているか考えないとね」
今田陽子は、相変わらずてきぱきとした言い方でいった。首相補佐官というのはそのようなものなのであろう。
「その中国のことは我々でやってみましょうか」
葛城である。
「別班が」
今田は意外そうに見た。いきなりこのチームに来てすぐにこのような話をするのは意外に珍しい。
「自衛隊は中国を仮想敵国としてみています。その中での情報を我々が見てみようということになりkます」
「葛城さん。まずは自衛隊の情報をもらってきてください。どうも防衛省というのは重要なことを覗いたどうでもよい、それも当たり障りもないような情報しか持ってこない。そのうえ、重要なことを質問すると防衛機密などといってなんでも隠す。そして、防衛に関する内容を全く政治家は理解できないというようなイメージがある。だからあなた方が内部で情報をとってきてください」
今田陽子は、葛城にそのように支持した。
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