「宇田川源流」【大河ドラマ どうする家康】 石田三成に焦点を当てた編集の面白さ

「宇田川源流」【大河ドラマ どうする家康】 石田三成に焦点を当てた編集の面白さ

 毎週水曜日は「宇田川教育論」か「大河ドラマ」に関してお話をさせていただいている。ニュースの解説ばかりでは肩が凝ってしまうので、一週間の真ん中は少し気を抜いた話ができるようにということで、大河ドラマに関しては「現在よりも過去について、そしてテレビドラマということに関して話をする」ということを、また「宇田川教育論」に関しては「若者を教育するということを通して、日本の将来を考える」ということをテーマにしている。要するに水曜日は、いつの間にか「現在ではなく、過去や未来を語る日」というようなテーマになりつつある。もちろんそのようなことをはじめから企画したわけではないのであるが、いつの間にかそのようなテーマになっている。

今週は久しぶりに大河ドラマ「どうする家康」について。

それにしても、しばらくご無沙汰していたら、ずいぶんと陣容が変わってしまった。すでにムロツヨシさん演じる豊臣秀吉も亡くなり、また今回の最後には宅麻伸さん演じる前田利家もナレーションで亡くなってしまった。今回は中村七之助さん演じる石田三成と松本潤さん演じる徳川家康の対立があり、また加藤清正などの動きがあり、そして石田三成が五奉行を辞任して佐和山にこもるところまでである。次回が、関が原前夜という事であろう。

基本的には歴史マニアであったりすれば、この後が何が起きるのかというストーリーラインはすべてわかっていて見ているのである。その内容の中でも今回は石田三成をうまく取り上げながら、「徳川家康自身が自分で天下を取るということを認識する」というような内面的な動きまで出てきている。その決心をつける場面で、野村萬斎さん演じる今川義元、岡田准一さん演じる織田信長、豊臣秀吉、そして阿部寛さん演じる武田信玄が出てきて、強い、そして人望のある人間が出て天下を治め戦乱の世を終わらせなければならないというようなことがフィードバックして出てくることになる。

徳川家康が、自ら天下取りを決断するにあたり、それらの「偉人・先人」の言葉や、多くの人の期待を背覆って天下取りに動き出したという演出を使ったのはなかなか面白いものである。

【どうする家康】「紀行潤礼」でも石田三成にスポット 〝近年の人気〟で大河主人公に推す声

 嵐の松本潤が主演するNHK大河ドラマ「どうする家康」の第40回「天下人家康」が22日、放送された。最後は中村七之助が演じる石田三成が豊臣秀吉亡き後、奮闘するという放送回で、ネットでは「石田三成を大河の主人公にしてもよいのでは」との声も上がった。

 秀吉が死去したあと、秀吉の遺言に従い、家康は五大老たちと政治を行おうとする三成。ただ、朝鮮出兵から引き揚げてきた加藤清正らと対立を深めることとなる。やがて加藤ら諸国大名たちは家康を頼るようになり、そんな家康に野心ありと三成は警戒心を強める。そんな中、加藤らが家康を中心とした政治を作り上げようと三成を襲撃。この騒ぎがきっかけで三成は佐和山城で隠居するというストーリーだった。

番組最後にはゆかりの地を訪れる「紀行潤礼」で三成の生まれた滋賀県長浜市と、秀吉との出会いを伝える有名な逸話「三献の茶」の舞台となった同県米原市の観音寺を紹介。その時、三成が使用したのが「こだかみ茶」で、ナレーターの松重豊は「近年の三成人気を受け、荒廃していた茶畑を地元の農家が復活しました」と説明した。

 この「近年の三成人気」というワードにネット上でも盛り上がりを見せた。三成はゲームやアニメでイケメンに描かれることも多く、人気が上昇しているといわれている。このワードに「ここ最近、三成人気あるよね」と賛同する人も多く、「明智光秀が大河の主人公になったのだから、石田三成を大河の主人公にしてもいいよね」という声も上がった。

2023年10月22日 東スポWEB

https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/280441

 今回の「どうする家康」は、本当にストーリーラインとキャラクター設定は「絶妙に面白い」と思う。それに対して残念なのは、以前も書いたがCGなどの「表現」ではないか。さすがに清州城が紫禁城の様であると、何か白けてしまう部分はある。その辺の描写は役者の演技とは全く異なるところであろう。

その演技に関して言えば「無法者で無頼」の織田信長と豊臣秀吉の「下品で悪虐」という感じがあって、なおかつ異常性が高いというところもあるし、一方で、主人公である徳川家康を「仁徳で治めた」というような感覚に作っているところが非常に面白い。気が弱い人が肝が据わり経験を積んでくると、無頼者や下品な人の扱いもうまくゆくようになり、また過去の「偉人」である今川義元や武田信玄という人々の影響を受けて成長をするというような感じになっている。どれが教師でどれが反面教師になったのかということは様々な解釈が出てくるが、その内容に関して面白くできているのではないか。

その意味で、私自身がこの関が原前後の家康で最も注目するのは「本多正信」である。はっきり言って徳川家康が「狸」といわれているそのほとんどは、本多正信の罪であるといって過言ではない。この「人を食ったような」視点というのは、司馬遼太郎先生の「関ケ原」そして、それをドラマ化したTBSドラマの「関ケ原」での森繁久彌さんの徳川家康と三国廉太郎さん(佐藤浩市さんの父)の本多正信で十分に書かれているのであるが、今回の松山ケンイチさんの演じるものも「曲者」感が強い。まっすぐな感じの本田忠勝(山田裕貴さん)との対照的な書き方でこれもなかなか面白い。

つまり今回の内容は「対照的なキャラクターを並べることによって、キャラクターを際立たせる」という手法を取り、その内容を非常に高いスキルの役者がやっているという感じである。当然に現実には、今回の石田三成のような「堅苦しい人間」はさほどいるものではないが、中村七之助さんも非常によく「嫌われ者」を演じているのではないか。

そのような「絶妙なキャラクター」設定から、石田三成を持ち上げる構成になっている。残念ながら今年の大河ドラマは「持ち上げられた人はそのすぐあと、数週間後にはいなくなる」法則がある。その「フラグ」が今回もたったのは、なかなか興味深いところである。

宇田川源流

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