日曜小説 No Exist Man 闇の啓蟄 第四章 風の通り道 15(了)
日曜小説 No Exist Man 闇の啓蟄
第四章 風の通り道 15(了)
「やめておけ」
松原の肩を叩くものがあった。他ならぬ大沢三郎である。
「大沢、てめえ」
「見ろ」
今、爆弾を手渡した若者たちが、松原の指示通りに動いたが、それを察知しているかのように、先に警察や自衛隊がすべてそれを阻止していた。
「ここでやめれば、次がある」
「じゃあ」
「松原さんは、野村さんとともに逃げなさい」
そういうと、大沢は自分の乗ってきた車に松原を乗せてそのまま逃がした。
「陛下、大丈夫ですか」
大沢は、そういうと朱雀門の陰から、天皇陛下のほうに近寄った。その大沢三郎を黒のワゴン車が遮った。
「大沢先生じゃないですか」
ワゴンから今田陽子が出てきた。
「おお、官房参与の今田君。いやいや、陛下が行幸されたイベントで爆発事件が起きたというから、慌てて駆け付けた次第で」
「よくここがお分かりになりましたね。私は、総理の支持で警察の車両でこのように駆けつけたのですが」
今田もすべて知っている。また大沢もすべて知られているということを知りながら、お互いに、相手を追い込むだけの証拠がない。しかし、今田にしてみれば、大沢をこれ以上近づけるわけにはいかない。何しろ、今回の天皇暗殺の首謀者なのである。
「いやいや、京都の人のうわさというのは素晴らしいものだよ。私などは、政治集会をしていたのだが、そこを青山優子議員に任せてこうやって駆け付けたわけで」
「そうですか。でも、自衛隊や警察の皆さんがしっかりとしていただいてますから」
そういうと自衛隊のヘリコプターが一機飛び立った。その時に、近くから爆弾らしきものが投げられ、ヘリコプターがバランスを崩してしまった。そのヘリコプターはバランスを崩してすぐにそのまま着地した。自衛隊は、何か来ることがわかっていたので、攻撃用のダミーのヘリコプターを先に挙げたのである、そのことから、陛下には何の問題もなかった。そして爆弾を投げたもののところに、すぐに警察が駆けつけて、取り押さえた。
その光景を見ていて、大沢はちょっと表情をゆがめた。今田はその表情を見逃さなかったが、それでも何も言わなかった。何かを言ったとしても全く意味がない。何か適当にごまかして逃げてしまうのに違いない。
「陛下は装甲車で駐屯地にお送りしてください。東御堂殿下もご一緒に。ヘリコプターをダミーに」
今田は、技と大沢の前で無線機に向かって話した。大沢は悔しそうな表情をしたが、しかし、誰かに連絡を取るようなこともなくそのままそこに立ち尽くしていた。
「ところで、大沢先生は、お車でいらっしゃったのですか。タクシーは入れないはずですが」
「ああ、でも危険そうなので車は返したよ」
「そうですか。こちらは定員がありますので、申し訳ありませんが」
「ああ、かまわんよ」
今田は、こうやって立ち尽くしている大沢を置いて、そのまま走行車の後を追った。嵯峨朝彦はその間ワゴン車の中で、ずっと大沢だけでなく周辺を観察していた。その中に野村昭介や松原隆志が大沢の車で逃走することも確認していた。しかし、彼らをとらえるkとよりもまずは平価を安全に送り届けることが重要であったので、それ以上の深追いはしないようにしたのである。
こうして、一連の動きは何事もなかったかのように終わった。
翌日、建物博の中止と、そのイベントに参加した中国の関係者、特に李首相の死が伝えられた。中国の周毅頼国家主席は、非常に遺憾の意を表するとともに、日本の賠償を要求する医師があるとすぐに発表した。
「どう思う」
バー右府に集まった嵯峨、今田、そして平木の娘である小川洋子と菊池綾子は、通信で東御堂と荒川につないでいった。青田もその向こう側にいる。
「まあ、陛下が御無事で何より。陛下がいれば、この国は安泰であろう」
東御堂はそういった。
「阿川首相は」
嵯峨は、今田のほうに向かっていった。
「だって、結局山崎瞳も、大津伊佐治も、松原隆志も、大沢三郎も陳も、どれも逃がしているんですよ。うまく捕まえたのは北朝鮮系の金日浩と、近藤正仁くらい。これではまだまだ続きそうという感じですよね」
「綾はどうおもう」
「まあ、逆に青山優子が味方になったから様々な情報が入るでしょう」
「そうだな」
このメンバーは、何かやり遂げたというよりは、今後まだ何かが起きるとしか思えていなかった。結局は、何の解決もしていない。
「そ上言えば、樋口は」
「ああ、樋口さんは一命はとりとめたのですが、もう車いすだって」
「気の毒なことをしたな」
「はい」
嵯峨は、目の前のグラスに手を付けた。すでにグラスの表面には結露が多くついていたが、嵯峨は全くそれを気にすることなく、そのまま靴につけた。横に座る菊池綾子が、慌ててグラスを拭いた」
「中国はどう出てくる」
「多分、初めからこうなるシナリオも装丁していたと思います。
「周がか」
「いや、陳文敏でしょう」
荒川は、そういって話を出した。
「陳か。今どこに」
「はい、関西空港のデータでは、昨日の事件の後すぐに中国に飛んでいます。」
青田博俊は、そのように報告した・
「ならば、そのシナリオBに移行するということか」
「そうですね」
「ではこちらも準備しなければなるまい」
「しかし、相手が中国ではなかなか」
「何とかしないとならないよね」
嵯峨は、そういって、グラスを飲み干した。
「陛下から、」
そういって終わりそうな雰囲気で、最後にずっと黙っていた東御堂が声をかけた。
「陛下」
「ああ、陛下から、今回の働き感謝すると。そして、この情報部を天皇直属の皇宮情報機関として
宮内庁から予算をとるということになった。四谷の君たちの小さなマンションの部屋も、なんとなくよくなりそうだ」
「皇宮情報機関ですか」
今田はため息をついた。自分の肩書に何かまた一つ入ったような気がする。
「逆に言えば、それだけ陛下も危機感をお持ちになったという事」
「そうだね」
東御堂は、そういうと、目の前のワインを飲んだ。
「では、諸君、近いうちに東京で会おう」
「弥栄」
了
あえて中途半端な終わり方にしました。
要するに、つぎのてんかいがありますので、よろしくお願いいたします。
闇の啓蟄02が、8月末から始まります。
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