日曜小説 No Exist Man 闇の啓蟄 第四章 風の通り道 7

日曜小説 No Exist Man 闇の啓蟄

第四章 風の通り道 7


「何だ、あのじじいは」

 建物の上からスコープを除いている大友佳彦はそう言って舌打ちをした。スコープの先には東御堂信仁が写っていて天皇はその陰に隠れていた。

「おい、誰かほかの角度から天皇を狙えないか」

 狙撃というのは一発の勝負である。何発も撃てるものではない。そのために、最も良く、そして確実に相手を殺すことのできるタイミングを待つことが重要である。爆発があろうと、他の者があろうと、全く関係がない。そのタイミングを待てない人は狙撃などは出来ないのである。大友はそのことを最もよく知っていた、そして、その為にインカムを耳から外した。他の雑音は、狙撃の邪魔でしかない。

 他の角度から狙えば、東御堂信仁はずれる。そしてその時に確実に狙えるのである。しかし、その意図がわからない者ばかりだ。ただの、それも日本のテロリストは全くその辺の組織ができない。

「無理だ。それは役目が違う」

「これは、

 大友は、それでもしっかりとスコープを覗いて、天皇を狙い続けた。その間にも多くの爆弾が爆発をした。舞台の横にある建物は、爆発の後に火がつき、音を立てて建物が倒れた。

「陛下、危なうございます」

 東御堂信仁は、天皇陛下をかばいながら、そのまま舞台の裏に回るように誘導した。

「今だ」

 大友は、その時に引き金を引いた。正確な銃弾は東御堂信仁のわずかなスキを潜って天皇に向かって進んだ。

「殿下」

 そのスキの部分を樋口がジェラルミンの盾て覆った。その瞬間、盾に金属音が響いた。

「だれか、あの建物の屋上だ」

「はい」

 警察官が数名でその建物に向かった。その手薄になった舞台に、北朝鮮人の集団が襲い掛かった。

「あそこだ」

 その瞬間に、スタッフウエアを着た金日浩とその手下が舞台の上に躍り上がった。

「殿下は陛下をお連れして裏へ」

 荒川が東御堂と陛下を案内して舞台の裏に向かった。

「まて」

 金日浩は、モノを投げ、拳銃を出して天皇を追ったが、そのテロリストの数よりも警察官の方が多かった。そして、その警察官の先頭には樋口が立って全体を指揮していた。

「お前が金か」

「なんだと」

「平木さんのかたき」

 樋口は、ナイフを持った金を組み伏せると、そのまま力いっぱい顔面を殴った。金は恨みのこもった目で樋口をにらんだうえで、隠していたナイフで、樋口のわき腹を刺そうとした。ナイフの使い方には、いくらか自信を持っていた金であったが、しかし自衛隊、それもアフリカのPKOなどで鍛えていた樋口の敵ではない。当然に、その手は樋口に封じられてしまう。他の北朝鮮の過激派はほとんどが警察に制圧されていた。中には銃を討とうと構える者ももあったが、複数の警察官に折り重なるように組み伏せられてしまってはどうにもならないのである。。

「全部読まれてるじゃないか」

 大津伊佐治は、苦笑いを浮かべながら、舞台の上の成り行きを見ていた。このようなときに舞台の上に行って天皇を狙っても仕方がない。大津は北朝鮮の連中とは異なって、先が読めていた。

 大津は、周りを見回すと、舞台の知覚に、阿川首相と中国の李首相がいる。阿川の周辺には官僚が片目、その外側に警察官が構えていた。とても大津一人で何かできるようなものではない。しかし、そこから少し離れたところには、中国の李首相がいた。中国の首相の警備というのは、当然に警備課が行うのであるが、今回のようにばれているときは、警察庁本庁の指揮かに多くの警察官が入る。その場合、警邏課の警備の警察官も警察庁本庁の指揮下に入ってしまうために、外国の要人の警備が手薄になるのだ。

 大津は、経験的にそのようなことを知っていた。そしてそのような警備の体制を見ても、今回の計画が全て警察が知るところになっていたことがよくわかる。

「おい、この計画、初めからばれているぞ」

 インカムにその様に話しかけると、大津は、落ち着きを払って非難をしている一般人に紛れて歩き始めた。

「皆さんあわてないでください」

 さすがに、この状況で警備員が何を言っても意味はない。しかし、それでも少しの人は、その指示に従っている。大津は、そのように警備に従っている一般の客の振りをして舞台の前の通路を歩くと、途中でその列を離れ、そのまま中国の李首相の横に入り、そのまま背中から、肝臓の辺りに深くナイフを突き刺した。

「うっ」

 大津は、そのまま近くにいる中国人の背中も一気に刺した。大津はこのようなことを考えて、ナイフを複数本用意してあった。李首相の背中だけではなく、近くの要人数名を次々と刺したが、その超えは、周囲の雑踏に紛れてしまい、他に聞かれるようなことはなかった。

「まあ、こんなもんか」

 大津はそう言うと、再度、避難者の列に紛れて、そのまま外に出ていった。

 一方大友は追い詰められていた

「警察が来てるのか」

 大友は、上り棒のような棒を伝って建物を降りると、そのまま爆発した建物の方に向かって走り始めた。

「建物の上だ」

 警察は、一般人の非難の誘導と、大友を追いかける隊が入り乱れていた。まさか爆発して火がついている建物の中に逃げるなどと言うことは、日本の警察は考えない。その警察の目をかいくぐって、爆発した建物の中に入った大友は、そこに隠してあった銃を腰に納めると、胸ポケットにあったスマホを操作した。すると、今まで大友がいた建物の下で大きな爆発が起きた。上っていった警察官が建物と共に崩れていった。

「ご冥福を」

 大友はそういうと、爆発した建物の奥に進んだ。一度爆発した建物というのは、爆発によって地盤が弱くなっていたり、あるいは、日が回ったりということ以外は、次に爆発することがない。そのように考えれば、実は爆発をした建物の方が安全なのである。しかし、一般の日本人の多くは、爆発をした方向から離れるように逃げるのである。自然災害ならばそれでよいが、人為的な場合、その様に逃げる心理を使って再度爆発させる可能性がある。大友はまさにその真理をうまく使って、逆に逃げたのだ。

「さて、裏の駐車場で最後の仕上げか」

 インカムを外してしまっている大友は、大津伊佐治の「計画がばれている」という単語は全く聞こえていなかった。計画通り、駐車場で松原と共に天皇を殺す計画通りに動いた。

宇田川源流

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