「宇田川源流」 ヨーロッパの中でイタリアが「一帯一路」から離脱の意向

「宇田川源流」 ヨーロッパの中でイタリアが「一帯一路」から離脱の意向

 ヨーロッパにおける「中国離れ」が進んでいる。今回はイタリアが中国の構想していr「一帯一路」からの離脱をアメリカに打診したという話である。

 一帯一路とは、中国が2013年に提唱した広域経済圏構想である。中国と欧州を陸路と海路で結ぶことを目指しており、沿線国に対してインフラ投資や貿易促進などを行っている。一帯一路は中国の重要な国家戦略であり、中国の経済発展や国際的な影響力を高めることを狙っている 。

 ヨーロッパと一帯一路の関係は複雑である。一方で、ヨーロッパは中国からの投資や市場へのアクセスを歓迎しており、一部の国々は一帯一路に参加している。例えば、ギリシャやイタリアなど財政問題を抱える南ヨーロッパの国々は、中国からの国債の買い増しや港湾開発などの支援を受けている 。また、中・東欧諸国と中国は「17+1」と呼ばれる協力枠組みを構築し、インフラやエネルギーなどの分野で協力を深めている。

 他方で、ヨーロッパは中国との競争や対立も強めている。ヨーロッパは中国の人権侵害や民主主義への圧力に懸念を表明しており、香港やウイグル問題などで対立している。また、ヨーロッパは中国の経済的な影響力や安全保障上の挑戦に対抗するために、自らも世界的な投資計画「グローバル・ゲートウェイ」構想を発表した。この構想は、中国の一帯一路に対する「真の別の選択肢」になるとしており、アフリカやアジアなどに対して持続可能で透明性の高いインフラプロジェクトを提供することを目指している。

 しかし、そもそも「覇権主義を標榜している中国」と「民主主義・自由主義経済」のヨーロッパ特に西側諸国とは完全に利害が離れていることになる。基本的には「政治が経済に介入する」という状況と「経済を自由に行って、その経済からの税収で政府が運営される」という主体性の違いはかなり大きな違いが出てくることになるのではないか。それでも「投資してくれる」ということが非常に重要になってきていたのであるが、しかし、政治的にそれが許されない状況になってきている。

 一つにはウイグルやチベットに関する人権問題である。スペインなどは首相をしていた李鵬氏(故人)に対して逮捕状を出すなど、様々な問題が出てきていたのである。そしてもう一つはアフリカや員同様における「債務の罠」である。そして何よりも、中国人の態度や図々しさということなどはかなり大きな問題になるのではないか。

 そして、もう一つの所では「ウイグル」の問題であろう。

イタリアが中国「一帯一路」からの離脱検討か 中国政府「両国は協力を強化すべき」

 中国が主導する巨大経済圏構想「一帯一路」に協力する協定について、イタリア政府が離脱を検討しているとロイター通信が伝えました。これに対し、中国政府は「両国は協力を強化すべき」とする考えを示しました。

 ロイター通信によりますと、イタリア政府高官は中国が主導する巨大経済圏構想「一帯一路」に協力する協定について期限を迎える来年、更新する可能性は非常に低いとの認識を示したということです。

 これについて、中国外務省の汪文斌報道官は10日の記者会見で「一帯一路」の成果を強調したうえで、次のように述べました。

   中国外務省 汪文斌 報道官

「両国は一帯一路協力の潜在力をさらに引き出し、各分野における相互の協力を強化し関係発展に向けたより多くの成果をあげ、両国や国民に利益をもたらすべきだ」

 ロイター通信によりますと、イタリアは経済活性化を期待して2019年に「一帯一路」構想に参加するも期待通りの成果が出ず、イタリア政府筋の話として経済発展への寄与が少ないことを理由に協定の更新を取りやめる可能性があるということです。

2023年5月10日(水) 18:36 |TBS NEWS DIG

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/478892?display=1

 イタリアは2019年にイタリアの方から望んで一帯一路に加盟している。2019年3月のロイターのニュースの中で「コンテ首相は、21日からの習近平氏のローマ訪問の際に暫定合意に調印する予定だ。これによってイタリアは、中国の通商網の改善を意図した数十億ドル規模の巨大プロジェクト「一帯一路」に参加することになる。 

 イタリアが主要7カ国(G7)の先頭を切ってこの野心的な事業への参加を推進していることは、米国政府を怒らせ、欧州連合(EU)本部も警戒心を示している。 

 欧州でも最も裕福な諸国の市場に容易にアクセスできる港湾を備えているイタリアを引き入れれば、中国にとって将来有望であり、プロジェクトの格も上がる。

 イタリア政府が「一帯一路」支持の見返りとして期待しているのは、輸出と投資の加速により、停滞する自国経済を、この10年間で3回目となるリセッション(景気後退)から引っ張りあげることだ。」

  と記載している。そのイタリアが、今回は逆に離脱するという。当然にイタリアの国内の世論が2022年のロシアによるウクライナ侵攻とそれに対する中国のロシア支援が問題になっていることは間違いがない。もともと人権問題などがある上に、中国人の性質やマナーが気に食わないで「嫌われる中国人」となっている状況であるにもかかわらず、経済的、または政府で言えば財政的な内容で何とか話を維持してきていたのであるが、その内容もなかなかうまくゆかなくなってしまい、最終的には一帯一路からの離脱ということになる。そのうえ、台湾問題などもあれば、イタリア国民の世論は「ウクライナ難民を作り出しているロシアを支援している中国と一緒に何かをするのか」と言ことで現政権に対して反発をすることになるのは必至であるということになろう。

 とはいえ、今後中国がロシアを見切るということもあり得ない。そもそも一帯一路の重要な国家として、というか通路としてロシアは必要な国家である。そのように考えれば「離脱をしたことの見せしめ・一罰百戒」という意味で中国とイタリアの対立が根深くなるということになり、そのことから、より一層中国の評判がヨーロッパで落ちることになるのではないか。

 さて、このようになったのは「戦争」ということが起きたときに、そこに参加していない国であってもどちらを支援するのかということで「国際的に色分けされる」ということを示唆している。「永世中立国」のスイスであってもウクライナ支援を主張しNATO加盟を主張しているのである。日本は「非武装」などと言っても経済そのものが国力の中心になるのであるから、経済だけで政界情勢とは関係ないなどと言うことは許される状況ではないのである。そのように考えれば、いかに日本の非武装を主張する人々が絵空事を言っているか、世界情勢を見ていないかということがよくわかる。

 さてイタリアの決断が他の国に伝播するのかということが大きな問題になろう。しかし、ロシアとの対立や、難民の問題などがあれば、当然に中国の「一帯一路」の企画だけではなく、その他の内容をすべて加味することが出てくることになろう。徐々に世界が二分化されてゆくことが、このような動きで見えてくるのではないか。

宇田川源流

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