日曜小説 No Exist Man 闇の啓蟄 第二章 日の陰り 17
日曜小説 No Exist Man 闇の啓蟄
第二章 日の陰り 17
現場は、酷かった。
樋口義明は、すぐに福岡に飛んできたが、福岡空港から福岡市内までの地下鉄はなく、バスで行くしかなかった。多くの人はタクシーで行けばよいというように思うのであろうが、実際にこのような時、つまり何か大きな事件が発生して混乱しているときは、バスなどの公共交通機関を使うことが最も早い。それもできれば急行や特急など、別料金が加算されるものは、返金の問題が出てくるので、最も早く目的地に到着するのである。
同時に、タクシーなどの個人的な乗り物は、このような仕事をしているときは、なるべく避ける傾向にある。当然にタクシーというのは1対1という関係にあり、なおかつタクシー運転手のテリトリーに自分が入るということを意味している。なおかつ、その状況で運転席には相手が乗っているというものである。もしも運転席にいる人間が何かを考えれば、座席に何かを仕掛けることもできるし、また目的地を変更して勝手に別な場所に行くこともできる。少し前のスパイものの映画ならば、鍵が開かないように仕掛けして、そのまま踏切に置かれてしまいい、殺すようなものもあった。つまり、タクシーなどに乗っている場合は、あまり安全ではないということになる。そのためになるべく沢岻^は使わないか、あるいは使う場合も相手の会社位は調べて乗るのが普通である。
今回はあまりも急であり、なおかつ福岡などは想定していなかったことから、樋口はバスで同を決めていた。しかし、早いと思われたバスの移動でも、やはり重体に捕まってしまうのである。かなり混雑したバスの中で、うまく座ることのできた樋口であったが、しかし、定員以上ではないかと思われる人を詰め込んだバスでは、やはり窮屈であることには変わりはない。ほとんどの人が普段は地下鉄を使っているのであるが、その地下鉄は、爆破されて不通なのである。
「ふー」
はっきり言ってため息を吐くしかない。福岡空港から博多駅まで、地下鉄で言えば、数駅分しか離れていない場所であるが、びったりと車が詰まっていて、全く動かない状態なのである。
普段の数倍時間をかけて、、バスは矢っと途中のバス停についた。多分バスも、なるべくすいている道を通ろうとしてくれたようで、社内放送で何喧嘩のバス停を飛ばしていた。樋口は乗り込むときに、自分の降りるバス停を言っていたので、バスはそのバス停の近くで卸してくれたのである。
「酷いありさまだな」
非常線が貼られており、なかなか近くには寄ることができない状態である。遠目で見るしかないのは仕方がないが、しかし、それでも一日しかたっていない現場はあまりにもひどかった。アスファルトは高熱で焼かれたためか解けて、下の方に流れている。何か粘性のある液体が、下に落ちるかのような感じで固まっていた。その間にはバスが落ちていて、そのバスの下に、もう一台、東京の四谷の事務所で見たときはわからなかった軽自動車がバスの下敷きになっていた。その車は、地下からの熱風で蒸し焼きにされたのか、下半分は熱によって塗料が剥げており、そこに消火用の水をかけて無理やり冷やしたためか、何か光るものがついていた。そして、窓ガラスが割られているところから、消防が命懸けで、社内に取り残された人を救助した後が見られる。その人は生きていたのであろうか。
樋口はそれらを写真に収めると、他の角度から写真を撮るように非常線の周辺を回り込んだ。
「あっ」
そんな樋口は、思わず声を上げそうになった。非常線の反対側、といっても他の非常線などもあるので、そこにたどり着くにはかなりの時間を必要とするような場所であるが、そこに、大友佳彦の顔を見つけたのである。
樋口にとっては、忘れたくても忘れられない顔である。
「大友」
相手に気づかれないように、樋口は小さく口の中でつぶやいた。大友は樋口に気付いていないようである。樋口は、他の物をとるような形で、大友佳彦を写真に収めた。
それにしてもおかしい。もちろんこのような場所に樋口がいるということは。大友は想定していないのであろう。しかし、それでも周辺を注意深く見ているはずである氏、大友の事であるから仲間を近くに配置して、インカムで通信しながらの視察になるはずだ。しかし、ここにいる大友は、間違煮なく一人だ。
大友も樋口も、もともと自衛官であってもスパイではない。自衛官は「小隊」という数名の単位で動き、そのチームで役割分担をしながら、最大の成果を上げるのである。つまり、自衛官において単独行動というのは基本的にはあり得ない。
もちろん、樋口は一人で来ている。これは、「視察」だからであり、今回のような爆発を伴うようなミッションを行うときは、間違いなく「チーム」で行わなければならないはずだ。しかし、大友は一人なのである。
「大友のチームが今回の首謀者や実行犯ではない」
樋口は直感で理解していた。当然に、大友佳彦は宿敵であり、アフリカのミッション以降、日本国の裏切り者であることは間違いがない。その時にテロリストと与して単独行動を学んだ可能性もすてきれない。しかし、やはり性質というのは若い頃から慣れているスキルに戻るはずだ。つまり、一人で今回の爆発事件を指揮したとは思えない。
つまり、大友は、誰かほかの「仲間」がやった事件を視察に来ているのに過ぎないのである。またそう解釈することが妥当なのだ。
樋口はすぐに荒川にメールを送った。そのメールを送った後にメールを拓くと、大友の写真が送られてきており、注意するように書いている。
「東京は、大友がやったと思っているのか」
棺はそうつぶやくと、大友もいるその現場をあえて離れた。大友が視察をしているということは、間違いがなく、左翼系の団体が主犯であろうし、また。その団体は天皇陛下を暗殺しようとたくらんでいることに間違いがないのだ。
今回大友佳彦は松原隆志の日本紅旗革命団に所属している。これが、大友が入っているのか、あるいは金で雇われているのかは分からない。しかし、その松原の団体に近しい左翼系または韓国や北朝鮮、韓国などの団体もあれば、イスラムのテロ組織も十分にあり得るのである。今回の調査に来ている樋口にとって、宿敵ともいえる大友よりも、そちらの団体を調べることの方が重要なのは間違いがない。
「しかし、大友がいると胃ことは事故ではないということも確かだ」
樋口はそのように見立てた。そのうえで、地下鉄に電気を送っている変電所に向かった。
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