「宇田川源流」【大河ドラマ 鎌倉殿の13人】 ほぼ毎週のように誰かが死ぬ大河ドラマの「感動的」もらい泣きになった阿野全成の死

「宇田川源流」【大河ドラマ 鎌倉殿の13人】 ほぼ毎週のように誰かが死ぬ大河ドラマの「感動的」もらい泣きになった阿野全成の死


 毎週水曜日は、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」について、私が好き勝手に書いている連載になっている。それにしても今回の大河ドラマは良く死ぬ。今回は最後(巻末)にだれがいつどのような死に方をしたのかの一覧表をつけたのであるが、まあ、30回までにほぼ毎回死んでいることがよくわかる。この後も毎回のように人が死んでゆくのであるから、なかなか大変なものであろう。

 もちろん、この死はすべて「史実」に近い内容であり、まあ、病死や事故死などもあるので何とも言いようがないのであるが、それにしてもこの時代の激しさを物語っているのではないか。三谷幸喜氏も、まさか毎週人の死を欠くことになるとは思ってもみなかったであろう。

 私のように作家業をしていると、人が死ななくて、それでも何かを感動的にしなければならないので、あえて架空の人物を作り、その架空の人物を生き生きと描いて、そのうえでその人物を劇的に殺すというようなことをする。私の書いた「庄内藩幕末秘話」に出てくる「石原主水」という人物がある。庄内藩幕末秘話では、それを書くときに、地味戸の人々の取材をしているとき「庄内藩は強かったから誰も死ななかったからね。白虎隊みたいに死んでくれれば、もう少し有名だったかもしれない」というような話が合った。そこで、唯一武器の買い付けに行って、襲われて死んだ石原倉右衛門という人物(史実)があり、そこに焦点当てることを考えて、その親戚ということで「石原主水」という人物を作り出したのである。もちろん創作上の架空の人物だ。そしてその架空の人物を生き生きと立ち回らせるために、本間助三郎、服部小作という二人の架空人物も作り出し、その架空の人物三人を生き生きと書くことによって死んだときの悲劇を増大させるという手法を取った。このことは潔くあとがきなどにも書いてあり、それだけ「物語性に苦労した」ということなのである。

 その意味では、今回の大河ドラマは、全くそのような苦労は必要なく、「病死」「暗殺」「権力闘争によっての死」「誤解」など様々な死があり、まさに「死に方の標本」のような感じである。

 今回は、本来最も使徒は遠いはずの存在、源頼朝の弟で、なおかつ僧侶である阿野全成が忙殺された。

【鎌倉殿の13人 主な退場者】真っ赤な鮮血に絶叫 全成ロス広がる 夫婦愛にネット涙&実衣にもらい泣き

 俳優の小栗旬(39)が主演を務めるNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜後8・00)は7日、第30話が放送され、俳優の新納慎也(47)がコメディーリリーフとして抜群の存在感を発揮してきた僧侶・阿野全成の壮絶な最期が描かれた。SNS上には「全成ロス」が広がった。

 <※以下、ネタバレ有>

 稀代の喜劇作家にして群像劇の名手・三谷幸喜氏が脚本を手掛ける大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。新都・鎌倉を舞台に、13人の家臣団が激しいパワーゲームを繰り広げる。三谷氏は2004年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は8作目にして大河初主演に挑む。

 新納演じる阿野全成は、源頼朝(大泉洋)の異母弟。修行を積んだ陰陽を駆使し、兄を補佐。政子(小池栄子)の妹・実衣(宮澤)と結婚。僧として北条の権勢が強まっていく様を見つめた。

 第30話は「全成の確率」。源頼家(金子大地)に対して呪詛を行った疑いにより、詮議を受ける阿野全成(新納)。比企能員(佐藤二朗)は背後に北条家の暗躍があると確信し、対決姿勢をさらに強める。夫・全成が権力闘争に巻き込まれた実衣(宮澤エマ)は激怒。娘・実衣の追及に、北条時政(坂東彌十郎)は名乗り出ようとするものの、妻・りく(宮沢りえ)に止められる。北条義時(小栗)は北条家を守るため一案を講じ、畠山重忠(中川大志)の助力を得る…という展開。

 全成は八田知家(市原隼人)が治める常陸へ流罪。しかし、所領の再分配をめぐって頼家と対立した能員が「実衣殿の身が危うい」と焚きつけ、全成は再び頼家を呪詛。知家が頼家に報告し、討ち取った。

 しかし全成は討たれる前、最期に呪文を成功。突風、横殴りの雨、雷鳴を巻き起こした。家人が全成を斬りつけると同時に雷が落ち、木が倒れる。致命傷には至らず、縄が解けた全成は肩口からの鮮血を目にし「実衣ー!」と絶叫。立ち上がり「フッ。『臨 兵 闘 者 皆 陣 烈 在 前!』『急急如律令』。ごう(合)!」【※1、※2、※3】と呪文を唱えながら、手刀を縦横に切った。恐怖のあまり、家人たちの腰が砕けた。

 「私の占いは半分しか当たらない」と自虐、実衣も「あなた、見掛け倒しだから」と評したが、最期に「人知を超えた力」を発揮した。

 夫の最期を義時から伝え聞いた実衣は「(人知を超えた力は)当たり前でしょ。醍醐寺で20年修行を積まれてきたんですよ。あの人は、そういうお方なんです。私には分かってた。ずっと昔から。やってくれましたねぇ。最後の最後に」と号泣した。

 SNS上には「全成さん最期はスーパー陰陽師に覚醒(涙)」「全成ロスです…実衣ちゃんとの夫婦漫才がもう見れないなんて…いつの頃からか日曜日の夜に全成殿に会えるのを楽しみにしていた自分がいました」「(真田丸の)秀次ロスに続いて全成ロスか。新納さん、キャラに生命を吹き込む技量が素晴らしい」「実衣ちゃんの涙につられて泣いた」「自分の血の赤を見て、宮澤エマさん演じる実衣に何度も言った『おまえには赤がよく似合う』を思い出したところで、涙腺がだばっと」「まさかあのおふざけシーンが最後の号泣シーンにつながると思わないじゃん」「タイトル回収が胸熱すぎた…初登場の風不発、清盛呪詛フェス、紫式降霊術などなど各シーンが思い出されて」などの声が続出。視聴者の涙を誘った。

 【※1】「臨 兵 闘 者 皆 陣 列 在 前」=九字の呪文と九種類の印により身を守る「九字護身法」。「臨める兵、闘う者、皆 、陣列べて、前に在り」の意味。

 【※2】「急急如律令」=中国漢代の公文書の末尾に書き添えられた決まり文句。「急々に律令の如くに行え」の意味。転じて、陰陽師や祈祷僧が呪文の効果が出るように用いた。

 【※3】「ごう」=「合」と書く。最後に九字の力を「合わせる」の意味。

8/7(日) スポニチアネックス

https://news.yahoo.co.jp/articles/aa704d500e41cc974732b8027d0d6b6fb3e43d95

 三谷幸喜氏の考えている全成の死は、まさに、北条と比企の権力闘争に巻き込まれ、特に、北条時政の妻りく(牧の方)によって「トカゲのしっぽ斬り」に使われた無残な死に方ということになっている。このことから、たぶん近々出てくる比企能員の乱に夜比企の死だけでなく、「牧の方の変」といわれる北条時政・牧の方の追放事件もすべてが出てくることになり、また源頼朝の死後、第一線を引いていた北条義時が政治の表舞台に再度戻ってくるということになってくるのではないか。

 この時代の動きを、「りく(牧の方)」「道(比企能員妻)」「北条政子」「実衣(阿波の局)」といった女性の動きを中心に、男性がそれに振り回されているかのように描く三谷幸喜氏の素晴らしい物語構成にはさすがに脱帽するしかない。なぜ「北条政子が承久の乱のときに豪族に号令をかけることができるほどの権力を保持することができたのか」ということを考えても、また、その豪族もどうして朝廷方(後鳥羽上皇方)よりもはるかに強いのかということも、このような「女性主導」というような考え方から見れば、ある意味でよく見えてくるのかもしれない。

 ある意味で「北条義時」の物語も見ながら、「鎌倉幕府が女性によって支配し、動かされてゆく」姿を見、その姿は現代の我々の家庭生活そのものに見せてくるのではないか。男性の強さと弱さ、そして女性の強さと弱さをしっかりと分かった物語の構成は、さすがに素晴らしいし、際立っている。

 今回の阿野全成の死も同じで、夫の最期を義時から伝え聞いた実衣は「(人知を超えた力は)当たり前でしょ。醍醐寺で20年修行を積まれてきたんですよ。あの人は、そういうお方なんです。私には分かってた。ずっと昔から。やってくれましたねぇ。最後の最後に」と号泣した。<上記より抜粋>とある内容が、まさに「夫婦しか知らない様々な事がある」という、形に残されない信頼があり、それは当然に政子と頼朝に間にも、義時と比奈の間にもあるということにつながる。その「絆」を一つ一つ丁寧に描いた作品であるということがよくわかり、その絆を守るために、何をしなければならないのかということをよくわかっている内容ではないか。

 来週はたぶん比企の乱であろう。その後に、源頼家が死んでゆくことになる。まさに血みどろの買いが続くのであるが、そのようにして鎌倉幕府が強くなってゆくのである。

 なお、この後に、先ほど書いた「退場者リスト」をつけておく。

<参考>

 【鎌倉殿の13人 主な“退場者”】番組公式サイトの「登場人物」欄にあるキャラクターのうち、劇中、その最期や鎌倉を去ったことが言及された人物。カッコ内は討った人物、要因(※印は推定、遠因)

 <第1話>千鶴丸(善児)

 <第3話>源頼政(宇治の平等院で自害=三善康信の文)、以仁王(奈良へ逃げる途中に落命=三善康信の文)

 <第5話>堤信遠(北条宗時)、山木兼隆(※北条宗時)、工藤茂光(善児)、北条宗時(善児)

 <第7話>長狭常伴(※三浦義村)

 <第9話>江間次郎(善児)

 <第10話>大庭景親(上総広常)、佐竹義政(上総広常)

 <第11話>平清盛(病死※後白河法皇&文覚の呪い)、義円(平盛綱※源義経の教唆)、伊東祐親(善児)、伊東祐清(善児)

 <第15話>上総広常(梶原景時&善児)

 <第16話>木曽義仲(源範頼軍)、今井兼平(※源範頼軍)

 <第17話>源義高(藤内光澄)、一条忠頼(仁田忠常)、藤内光澄(源頼朝の御家人が首、北条義時が立ち会い)

 <第18話>安徳天皇(壇ノ浦の戦い、入水)

 <第19話>源行家(ナレ死「鎌倉方に捕まり、首をはねられるのは、これより少し後のこと」=語り・長澤まさみ)

 <第20話>藤原秀衡(※病死)、藤原頼衡(善児)、里(源義経)、源義経(※藤原泰衡軍、自害)、弁慶(※藤原泰衡軍)

 <第21話>八重(鶴丸を救出したが、川に流される)

 <第22話>後白河法皇(※病死)、河津祐泰(工藤祐経の襲撃=第2話)

 <第23話>工藤祐経(曽我五郎)、曽我十郎(※仁田忠常)、曽我五郎(梶原景時が斬首宣告)

 <第24話>岡崎義実(曽我事件への関与を疑われたが、その功により斬首は免れ、出家。鎌倉を去る)、大姫(病死)、源範頼(善児)

 <第26話>源頼朝(落馬、病死)

 <第27話>佐々木秀義(三浦義村「もう死にました」)

 <第28話>中原親能(三幡の乳母夫だったが、三幡が病死。出家し、鎌倉を去る)、梶原景時&梶原景季(上洛を計画したが、義時が阻止)

 <第29話>三浦義澄(病死、北条時政が振り払う)、安達盛長(比企能員「奸賊、梶原景時がいなくなりましたな。義澄と盛長も去り、もはや宿老たちの評議はあってないようなもの」)

 <第30話>平知康(「鎌倉殿にいらんと言われたのだ。(京に)帰るしかなかろう」)、阿野全成(八田知家)

宇田川源流

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