「宇田川源流」【大河ドラマ 鎌倉殿の13人】 物語の矛盾を解消するための「忍者」「暗殺者」は常に人間離れしている

「宇田川源流」【大河ドラマ 鎌倉殿の13人】 物語の矛盾を解消するための「忍者」「暗殺者」は常に人間離れしている


 毎週水曜日は大河ドラマ「鎌倉殿の13人」について、私の勝手な意見を書いている。まあ、一応歴史小説作家であるので、大河ドラマなど「事大の描き方」ということに関しては、私自身も作品の中でそれなりに考えている部分もあり、その内容の違いが見ていてなかなか面白いと思う部分がある。ある意味で、私の勝手な内容にお付き合いいただくということになるのではないか。

さて、今回、「第11回」は平清盛が死ぬところからスタートする。平清盛は、栄華を誇り平家でなければ人にあらずとまで言わせた人物であるが、逆に人であるということから、当然に寿命による死が訪れることになる。当時にしては64歳と還暦を超えた「長寿」であるといえるのであるが、当時、平清盛は「東大寺の大仏殿を焼いたことによる仏罰」によって「高熱」が出て死んだとされている。多分高熱が出たということや、福原京(当時は京都から現在の兵庫県の方に都を移していた)で日宋貿易をしていたことから、マラリヤやデング熱のような感染症であったと考えられている。

いずれにせよ、平清盛の死は当時の社会情勢を一変させてしまう。

私の歴史的な研究の中に「二代目の研究」というものがあり、それは、初代が偉大過ぎた場合、二代目は目立たなく加ありの実力があっても、父と比較されてしまうことから凡庸とされてしまうということになる。これは、源頼朝の息子頼家も、また足利尊氏の息子義詮も、また徳川家康の息子秀忠も、いずれもそれほど素晴らしいと評価されたことはないのではないか。そのように考えた場合、平清盛の息子である宗盛も、それほど能力が低かったとは思わないものの、しかし、源氏や木曽義仲が勃興し日の出の勢いで、それに対して徐々に斜陽になってきている平家を再興するだけの力はなかったのではないか。少なくとも老練な後白河法皇を力づくであっても従わせるだけの力がなかったのではないか。

その日の出の勢いであったはずの源頼朝も、関東武士に、一緒に育っていない「面識のない兄弟」の間の内在的な対立は、なかなか大変なことになってきているのではないか。

「鎌倉殿の13人」アサシン善児に衝撃オファー ネット戦慄「背筋凍る」「エグい」政子懐妊まさかの結末

 俳優の小栗旬(39)が主演を務めるNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜後8・00)は20日、第11話が放送された。

 <※以下、ネタバレ有>

 ヒットメーカーの三谷幸喜氏が脚本を手掛ける大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。新都・鎌倉を舞台に、頼朝の13人の家臣団が激しいパワーゲームを繰り広げる。三谷氏は2004年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は8作目にして大河初主演に挑む。

 第11話は「許されざる嘘」。源頼朝(大泉洋)の新たな御所が鎌倉に完成。坂東武者に平家の旧領を恩賞として与えるなど着々と体制が整えられ、北条義時(小栗)も慌ただしい日々を送っていた。しかし、りく(宮沢りえ)は頼朝の舅である夫・時政(坂東彌十郎)の処遇の低さに不満が募る。一方、都においては平清盛(松平)が敵対勢力の掃討に乗り出し、その苛烈さに人々が恐れおののく。そんな中、平家討伐を焦る源義経(菅田将暉)は集った兄たちの前で…という展開。

 1180年(治承5年)冬、北条政子(小池栄子)が2度目の懐妊。阿野全成(新納慎也)によると、親が徳を積めば望みの男児が生まれるとあり、伊東祐親(浅野和之)&祐清(竹財輝之助)父子の恩赦が決まったものの、一転、全成は「生まれてくるお子のためには、まず千鶴丸(頼朝と八重の子)が成仏しなければなりません。その功徳によって、再び男として生を受けるのです。お命を奪ったのは、伊東祐親殿と聞いております。伊東殿が生きておられる限り、千鶴丸様の成仏は難しいかと」と進言。頼朝の命令の下、祐親に仕える下人・善児(梶原善)が祐親&祐清父子に手をかけた。

 義時にとって、祐親は祖父。頼朝の家臣となった梶原時(中村獅童)は「わしがお迎えに上がったところ、ご子息とともにご自害された」と説明。既に亡骸もない。「あの方に限って決して、そのようなことは」「おかしい!」と憤る義時は「人を許す心が、徳となるのではないのですか。それゆえ、望みのお子を授かるのでは!」「爺様はもう、帰ってはきません!」と鬼の形相になり、頼朝に猛抗議した。

 御堂の全成は「胎内のお子は、生まれても定命が短いと出ておる。千鶴丸はいまだ成仏できておらぬ。千鶴丸を殺めた者が生きている限りは…」と青ざめた。

 裏庭。景時は立ち去る善児を呼び止める。「善児、わしに仕えよ」。振り向いた善児は膝をつき「へぇ」――。

 頼朝の冷酷な命令に、景時の衝撃のスカウト。祐親は千鶴丸暗殺を善児に命じたため、因果応報となった。

 SNS上には「怖い怖い背筋が凍る」「今日は因果応報回すぎる」「因縁の続きが悲劇を呼ぶ。恐ろしい脚本」「想像以上に『許されざる嘘』の内容が…たぶん、今までで一番エグい回」「梶原景時と善児のタッグ、怖すぎる」「普通は義経=善玉、景時=悪玉。でも、このドラマの義経は屈折していて、景時はここまでのところ、むしろ誠実な印象…と思ったら、景時、このドラマ最大のダークサイド・善児とタッグ組むのか」「1話で何週分の要素が入ってたの」「今回マジで地獄のピタゴラスイッチだった…本来めでたいはずの出来事が起点になって、それぞれが良かれと思った一言や行動がまさかの最悪な結末」などの声が続出。反響を呼んだ。

3/20(日) スポニチアネックス

https://news.yahoo.co.jp/articles/61d1d0f0e2512d41fd1f9accb3b3f444f1148332

 三谷幸喜氏の作品である今回の内容は、コミカルな中にも人間性がかなりデフォルメした形で出されてくる。人間というのはなかなか面白いもので、生身の人間性を極端な形で見せられてしまうと、どうしても笑ってしまう。

芸人のお笑いなどは、その中の「ドジ」や「思い違い」などを極端に演じることによって笑いを取っている。「あり得ない」と思いながらも「そういうところあるよね」といって、身近な人、特にあまり好ましく思っていない人の癖などを思い出し、その人と芸人を重ね合わせて、笑うのである。もちろん、その笑いは、「あり得ない」ということを前提に置きながら類似性を持つという自分の中の矛盾をも楽しみながら笑うということで、自分の中の矛盾を吐き出しているといえる。

さて、今回の内容も同じで、源義経(菅田将暉)の極端な「はみ出し者ぶり」が、一つの恐怖であり、またあり得ないと思いながらも、自分の身近な空気の読めない人になんとなく重ね合わせてしまうということになる。これと同じことは、亀の前(江口のり子)についても同じで、女性の陰湿ないじめに関して、これほどぴったりくる演技はなかなかないのではないか。

そしてその極端な内容を演じているのが「善児」(梶原善)である。もちろん、史実に存在するような内容ではなく、「暗殺者」、後の忍びというような書かれ方で、世の中の汚れ仕事を一手に引き受ける人物である。

私などは、歴史小説を書いている場合に、なんらかの矛盾が生じることがある。実際に、同時に二か所で何か事が起きるとか、情報が通常の移動よりも早く伝わるなどがその代表的な例になる。今回の内容では、源頼朝(大泉洋)が、恩赦を与えるということを言いながら、片方で千鶴丸を殺した伊東祐親(浅野和之)を殺さなければ前の男の子が成仏しないので、男の子が生まれないというようなことで「殺さなければならない」というような矛盾した内容になる。そこで、伊東祐親を「殺す」という選択肢になった時、表れたのが善児ということになるのである。

歴史的には、富士川の合戦の後、平家が助けに来ないことから切腹をするのであるが、今回は北条義時(小栗旬)の家族であるという関係から、殺さないという選択肢になった。しかし、それを「殺す」ということで、一つのドラマを作り、そのドラマの中に矛盾した結果を暗殺者を使って、頼朝や梶原景時(中村獅童)の「内面的な怖さ」をあぶりだす手法は、さすがである。なおかつ「自害したのだ」というセリフから、記録上切腹したことになっているということともつじつまを合わせている。表では言わないかもしれないが「歴史的な記録が真実とは限らない。記録はあくまでも誰かが過多記録でしかない」ということを熟知した物語の作り方には、感服する。

さて、この善児、梶原景時に使えることになる。まさに、この事が義経と景時の決定的な対立になり、なおかつ、そのことが頼朝と義経の対立を招いて、最終的には悲劇になるということになる伏線となるのであろうと予想するが、どうなのであろうか。

宇田川源流

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