【有料メルマガのご案内】「宇田川敬介の日本の裏側の見えない話」 第52話 緊迫するウクライナ情勢に見るロシアと中国と北朝鮮 2 なぜロシアはハイブリッド戦争をしなかったのか

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第52話 緊迫するウクライナ情勢に見るロシアと中国と北朝鮮

2 なぜロシアはハイブリッド戦争をしなかったのか



 ロシアがウクライナと戦争の準備をしているということは、最近でもニュースの中で様々に言われております。

アメリカ発おニュースでは、明日にも戦争がはじまり、短い期間で首都キエフまで占領されてしまうのではないかというような話が伝わってきています。

一方フランスなどでは、話し合いで解決できる手段が残っているというようなことを言います。

ロシアからの情報も、「決して戦争はしない」というようなお呪法が出てみたり、一方で「フランスと同意をしても意味がない」というような話になっています。

戦争の前というのは、一般論として、情報が錯綜し誰が信用できることを言っているのかわからなくなります。

単純に、情報が事実に基づいて行われるのではなく、情報の発信が、伝える人、ジャーナリストやそこに向かって発信している人の「希望的観測」によって左右されてしまう。

そのことを考えると、真相を知ることはなかなかできないので、困ったものである。

そのような中で、わかることをまずはまとめてみよう。

要するに「現状の事実だけを並べて、その意味をしっかりと検証する」という方法で、冷静に、そして誰かの主観をなるべく(あくまでもなるべくだが)含むことなく、分析をしてみようと思うのです。

そのように、まずは客観的に「現在の置かれた状況」をしっかりと分析することによって、ロシアの狙いは何かということだけではなく、世界全体の変化が見えてくるのではないでしょうか。

まずはそのことをしっかりとやってみたいと思います。

さて、まずはロシア軍について考えてみましょう。

ロシア軍は、人員90万人で、その人員が「ロシア陸軍」「ロシア航空宇宙軍」「ロシア海軍」「ロシア空挺軍」「特殊作戦軍」に湧かれています。

もちろん均等に分かれているわけではありませんが、2014年のクリミア半島危機の時は、「ハイブリッド戦略」ということを使ったので、特殊作戦群が中心であったということになっています。

突然「ハイブリッド戦略」などということを書いたので、わかりにくかったかもしれません。

まずは、辞書の定義を出します。

Wikipediaによるとこのように書いてあります。

<以下抜粋>

ハイブリッド戦争(ハイブリッドせんそう、英語: hybrid warfare)とは、軍事戦略の一つ。正規戦、非正規戦、サイバー戦、情報戦などを組み合わせていることが特徴である。

ハイブリッド戦略とも呼ばれる。

ハイブリッド戦争の概念が登場したのは、1999年に中国の軍人の喬良と王湘穂が発表した「超限戦」である。

ここでは政治、経済、宗教、心理、文化、思想など社会を構成する全ての要素を兵器化するという考えが示されていた。

2013年にはロシアの参謀総長ゲラシモフが、「予測における科学の価値」という論文を発表した。21世紀には近代的な戦争のモデルが通用しなくなり、戦争は平時とも有事ともつかない状態で進む。

戦争の手段としては、軍事的手段だけでなく非軍事的手段の役割が増加しており、政治・経済・情報・人道上の措置によって敵国住民の「抗議ポテンシャル」を活性化することが行われる、とゲラシモフは論文の中で述べている。<中略>

ハイブリッド戦争が特に注目され始めたのは、2014年クリミア危機からである。

この紛争において、ロシアはほぼ無血でクリミアを占領・併合した。

そのためロシアは何か新しい軍事力行使の形態を生み出したのではないかと注目が集まった。

英国際戦略研究所(IISS)は2015年5月19日、「アームド・コンフリクト・サーベイ2015(Armed Conflict Survey)」において、ロシアがクリミアを併合した手法を「ハイブリッド戦争」と規定した。

<以上抜粋>

このように、クリミア半島の時に、ロシアはハイブリッド戦争を行ったのです。

もともと、周到にクリミア半島の中にロシアの軍人(特殊作戦軍)を入国させ、そのうえで、反政府派を焚きつけてウクライナの政府に反対するような意見を造成し、反政府運動を拡大させたのです。

そのような「スパイ工作」を行ったのは、間違いなく特殊作戦軍とSVR(ロシア対外諜報部)ということになります。

さて、そのような話は別にして、今回もその特殊作戦軍は既にウクライナに入っているということになりましょう。

しかし、ウクライナ側も2014年のクリミアの問題があるということになりますので、そこまで大きな力にはなっていないようです。

逆に言えば、ロシアのプーチン大統領はなるべく軍を動かしたくなかったのではないかと想像します。

現在の財政状況から考えれば、大規模な軍の移動はかなり大きな財政負担になるでしょう。

ということは、このようになるまで、ロシアのプーチン大統領が軍隊を大きく動かしたのが今年の1月ですから、昨年の12月までの間にそれらの工作を試して、それで失敗したのか、あるいは、プーチンは今度は初めから軍を寄せるつもりでいたのかが気になります。

このように見ていると、私のメモによれば、2014年以降、2016年・2017年・2018年・2020年、それぞれウクライナの軍事工場や弾薬庫で原因不明の爆発が起きています。

また、2018年、2020年にウクライナの東部で大規模な停電が起きています。

そして2020年には軍司令官が乗った航空機の墜落が起きているという状態ではないでしょうか。

このように見ていると、ロシアは、すでに「2014年以降ウクライナを併合するように反対派や軍事工場に対して工作を続けていた」ということになったということになります。

また、2021年4月にはウクライナとロシアが互いに外交官を追放するという事件が起きており、また、2021年4月にもロシアはウクライナとの国境に軍を終結させているという事件があるのです。

このように見ていると、実態としては、もともとはプーチン大統領はウクライナに対して何らかの工作(特殊作戦軍)でウクライナを手にしようとしていたことがよくわかります。

ウクライナはこれらの事故に関して、「ロシアの工作によるもの」であるということを表明していますが、当然のことでロシアはそのようなことを肯定するはずがありません。

ロシアは、様々このように工作をしていたと思いますが、ウクライナがすでに2014年のクリミア半島危機で問題になっていたことから、ハイブリッド戦略に屈しない状態でロシアに対する反感が強かったということが見えてくるのではないでしょうか。

もともと、クリミア半島に関しては、ウクライナ本体がウクライナ人であるのに対して、クリミア半島はタタール人やロシア人移民が多く、ウクライナ人による政治に対して反感をもっていました。

もちろん移民が多いというのは、旧ソ連の時にクリミア半島に旧ソ連軍が大規模な海軍基地を持っていたことから、そこに入ってきた人がいるので、旧ソ連に親近感のある人が少なくないということになります。

またタタール人はイスラム教徒が多いので、やはりウクライナ人の政治にはあまり馴染まないということがあるのかもしれません。

2014年のクリミア半島危機において、これら「反ウクライナ人」の人々は、ほとんどクリミア半島のロシア併合(もちろん正式に国際承認されたものではありません)の時に、クリミア半島とともにロシアに行っているということになります。

2014年、クリミア半島だけではなく、そのままロシアはウクライナを併合しようとして様々な動きを行っておりましたが、しかし、ウクライナ人の反発によって失敗したということになります。

現在はその時と基本的に環境は変わっていません。

この環境が変わっていない状況において、工作をしてもあまり効果が大きくなかったということは言えるのかもしれません。

逆に言えば、ロシアの特殊作戦軍や情報部は、クリミア半島を併合した時の成功体験で行っていても、それはうまくゆかないということになります。

その上、これだけ軍需工場や弾薬庫の爆破事件を起こし、それらが、事実かどうかは別にして、ウクライナ政府の発表のように「ロシアが工作した」ということを主張するようになれば、ウクライナ国内におけるロシアへの反感は多くくなるということになります。

そのような中で工作をしていましたが、プーチン大統領はこらえきれなくなって、このタイミングで軍を動かしたということになるのではないでしょうか。

では、なぜこのタイミングなのでしょうか。

もともとプーチン大統領は、自分の就任期間中に「旧ソ連の支配版図を復活する」ということを宣言しそれを目標にしております。

この言葉には二つの意味があるということになります。

一つは、1990年の旧ソ連崩壊前の「旧ソ連邦」の復活ということになります。

ウクライナやカザフスタン、タジキスタンなど、もともと旧ソ連邦であった国々を併合またはそのほかの方法で、影響力を行使するということを言っております。

もちろん、プーチン大統領が2006年くらい(詳しい日付は忘れましたが)にそのことを主張した時は、多くの人が「何を言っているのか」というような反応しかしていませんでしたが、2014年のクリミア半島位から、かなり現実味を帯びてきたという感じになっています。

「併合」や「占領」ということになれば、わかりやすいかもしれません。

しかし、ロシアの場合は、もともと「連邦国家」であった者が、その連邦を形成している国々が、主権をもって独立したという歴史です。

現在のロシアも「連邦国家」で、様々な国があって、その国が軍、外交などを連邦政府に移管して、統一して行うということになります。

ある意味で、アメリカ合衆国と同じような感じであると考えていただけで場良いかもしれません。

その意味で、ロシアは、単純に併合するというような感じだけではなく、連邦国家として、内政的な主権を保ちながら合衆国的な連邦国家を形成するという音も含めるということになるかもしれません。

このような意味で、ウクライナは、プーチンの連邦国家の誘いも断ったということになるのでしょう。

もちろん、それどころか対ロシア(旧ソ連ですが)と対抗するために作られたNATOに加盟するということを検討し始めたのですから、完全に敵対的行動をとったということになると思います。

少なくともプーチンにとってはそのように見えたことになります。

当然に、タイミングとしては、この「ウクライナのNATO加盟よりも前」にウクライナを併合しておかなければならないし、また、軍事行動を起こしてもウクライナのNATO加盟を阻止するということが一つの目的になるでしょう。

しかし、それだけならば外交交渉など、他のこともできるのではないかと思います。

ここまで大きく動いたということは、他の要因があるのではないでしょうか。

次回はそのことを見てみましょう。

宇田川源流

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