「宇田川源流」【大河ドラマ 青天を衝け】 妻の偉大な力がよくわかる「女性が主役の文明開化」

「宇田川源流」【大河ドラマ 青天を衝け】 妻の偉大な力がよくわかる「女性が主役の文明開化」


 水曜日は大河ドラマ「青天を衝け」について書いている。今回は全41回のうちの35回であるから、残りはあと6回ということになる。今回は明治12年、アメリカ前大統領グラント夫妻の訪日に際して、東京商法会議所、東京府会に働きかけ、接待委員会を組織。福地源一郎と共同で接待委員総代を務め、歓迎行事を準備、飛鳥山の自邸(迎賓接待用の別邸)でも歓迎会を実施した内容を、一回をかけて話をすることになる。

 それにしても今回の内容は華やかであったという評価であろう。なんといっても、今回は「女性」が主役である。大河ドラマで渋沢栄一が主役であるということを言いながらも、今回ばかりは「渋沢栄一もほとんど出てこない」といって過言ではない。もちろん出番はあったのだが、「目立たない」といって過言ではないのではないか。

 それにしても、脚本が大森美香さんであるだけに、「女性」の書き方は「過度に美化しないでリアル」である。渋沢栄一や井上馨、大倉喜八郎、益田孝などの妻や娘がでてきて、外国に直接触れるという打ち合わせをするが、実に、女性らしい話になる。

 馴れ初めの話や、本来の話ではなく服装や趣味の話など、どうしても中心の話題からずれていってしまうさまなどは、実に「現在の女性が共感できる書き方」になっているのではないかという気がしてならない。というか、なんとなく、身近にあるような感じになっているところが素晴らしい。世の男性は「妻たちが集まるとこうなるよな」というような感覚をもって見ていたのではないか。

 実際に女性たちが「接待の場」に出たときに、やはり「礼儀正しく」また「華美にならないで上品に」というような「日本女性」をこなしていたのは、さすがはNHKの時代考証ではないか。後に「鹿鳴館の花」といわれる井上馨の娘井上末子などが今回出てきていて、なかなかいい味を出している。つまり、この回の描写が、そのまま「鹿鳴館外交」につながることになる伏線になっているし、また、そのような華美な接待ではなく、心のこもった接待をすべきという渋沢栄一の話は、その鹿鳴館外交を止めさせるという政府の動きの伏線になっている。

 このように、日本の歴史を知っている人からすれば、様々な歴史の伏線がこの中にあるのではないか。ドラマに後に書かれるかどうかは不明だが、渋沢栄一は、この時の経験から女性教育にも最終的には投資し、明治20年(1887年)伊藤博文、勝海舟らと共に、女子教育奨励会を設立し、これを母体として東京女学館を設立。明治34年(1901年)日本女子大学の創立においても支援を行っている。

青天を衝け:めとって敵なし! 千代は「世界に冠たるおなご」 栄一、べた褒め&感謝のハグも視聴者は“今後”に不安

 俳優の吉沢亮さん主演のNHK大河ドラマ「青天を衝(つ)け」第35回「栄一、もてなす」が11月14日に放送され、千代(橋本愛さん)が中心になって、来日したアメリカ前大統領グラントを渋沢家でもてなす様子が描かれた。

 第35回では、アメリカ前大統領グラントの来日が決まり、栄一(吉沢さん)たちが民間を代表して接待することになった。栄一は、夫人同伴が当たり前の西洋流を採り入れようと、千代やよし(成海璃子さん)にも協力を願い出る。そこに、大隈綾子(朝倉あきさん)や井上武子(愛希れいかさん)ら政財界の婦人も加わり、西洋式マナーの習得に悪戦苦闘するも、官民あげた歓迎は順調に進む。数日後、グラントが“渋沢家に行きたい”と言いだし……。

 そこで千代は大はりきり。娘の歌子(小野莉奈さん)や書生たちに手伝わせて、てきぱきと準備を進め、飛鳥山の渋沢邸にグラント一行を迎え入れる。楽しそうに働き回る千代の生き生きとした笑顔に、栄一は「何より、お千代のあんな顔を見るのは初めてだ」と頬を緩める

 さらに、千代らの活躍もあって、接待員の務めを無事に果たした栄一は夜、「お千代、おめぇはすげぇ。今までも何度も、お千代をめとって、俺は敵なしとは思っていたが、今回はまことにたまげた。お千代は世界に冠たるおなごだ。極上だ。かけがえのねぇ奥様だで」と絶賛。そして栄一は、千代を優しく抱きしめ「どうしても、言いたくて言いたくて仕方ねぇ。ほれ直した。ありがとう。お千代」と感謝を告げる。

 SNSでは「千代ちゃんかわいい」「お千代さんがすてきすぎて」「お千代のあんな顔を見るのは初めてだ。そう言う、栄一が良いな」「栄一、千代をべた褒める」「世界に冠たるお千代さん 」「めとって敵なし。これはうれしいね、お千代」などと視聴者は反応。

 一方、同回ではコレラまん延が示唆され、「えっ…フラグ……?」「コレラ、フラグ…」「フラグすぎるわ」「なんかいいシーンやのに不穏なんですが」「やばい…フラグいっぱい」と今後の展開を不安がっていた。

 「青天を衝け」は、“日本資本主義の父”と称される渋沢栄一が主人公で、連続テレビ小説(朝ドラ)「風のハルカ」(2005年度後期)、「あさが来た」(2015年度後期)などの大森美香さんが脚本を担当。「緻密な計算」と「人への誠意」を武器に、近代日本のあるべき姿を追い続けた渋沢の生きざまを描く。

2021年11月14日 マンタンウエブ

https://mantan-web.jp/article/20211114dog00m200033000c.html

 もう一つの内容として、上記にも少し書いたが「日本の心のこもったおもてなし」ということが最もすごいのではないか。いや、今回はまさに「血洗島名物煮ぼうとう」であろう。現在、外国から日本に来る観光客の多くは「リトルヨーロッパ」や「リトルアメリカ」を求めてくるのではなく「日本」を感じるものを欲しがってきているのである。渋沢栄一は、少なくともドラマの中で、自身がパリに行った時の思い出として「ポトフがもっとも印象に残った」と語っているが、実際に「おいしい」とか「高価」というのもすごく記憶に残るが、実際には「家庭料理」などの方が心に残る。私自身も海外に行くことは少なくなかったが、家庭料理で、自宅でもてなしてくれるときには、あまり深い考え方などをすることなく、心の底から笑えるような接待になることも少なくない。やはり自宅での接待ということになると、こちらも心を開けるおである。

 グラントも、ドラマの中でそうであるという状況になる。欧米の本当の狙いなどを、渋沢の自宅で満足行く接待を受けたというときに初めて本音で話すようになる。このような所の描写が、このドラマでは非常にうまくできている。最も良い笑顔で、最も心を開いたときに、本音のことを言い合えることができる。そのように「人間と人間」というような本音の付き合いができるようになって、それで初めて外交が成立するのであり、現在の外交はどうなのか、当時から政府の外交というのはちゃんと本音の画工ができているのか、何か考えさせられるところがある。

 そして、その本音の外交を引き出すことがでいたのは、渋沢栄一のパリでの経験を聞いた妻の千代の采配であろう。実際に「妻」がしっかりと支えるから、男性が活躍できる。もちろん女性が外に出て仕事をしてはいけないとか、そういうことではない。しかし、男性がそのように活躍しているから、女性がいざ、今回のドラマのように自分たちが中心になって物事を進める時には、外に出ているはずの男性も驚くような活躍ができるのではないか。東京都、現在で言えば北区の飛鳥山における渋沢栄一の新居を急遽仕上げ、そしてすべてを指揮しながら、グラントがくるまでの状況に仕上げたのは、やはり、渋沢栄一ではなく、「妻」だから、そして渋沢栄一を最も知ることができる人物であるからではないか。この時代、「渋沢栄一がすごい」ということを言えば、それは「その渋沢栄一を支えた妻の千代がもっとすごい」というような形になるのではないか。現在の家族関係や夫婦関係はそのようになっていないのか、そこが気になるところである。

 そしてその妻のすごさを最もよくわかっているのが、渋沢栄一のすばらしさではないか。妻を最も評価しているのが、夫婦のあり方であり、それは舞踏会をしているときの大隈重信もそうであるし、渋沢栄一も千代を高く評価している。このような関係が現在にもあてはまるようにすべきではないか。

 何かドラマから教えられることが非常に多いような気がする。ドラマとはそのようなものでよいのかもしれない。

宇田川源流

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