「日曜小説」 マンホールの中で 3 第三章 10

「日曜小説」 マンホールの中で 3

第三章 10


「いつやるんだ」

「いや、10日を待たないとならないだろう」

 次郎吉は慎重であった。宝石がそろっているのに、東山の財宝を取りになかなかゆかないのである。

「なぜ10日なんだ」

 善之助は少し焦れたように言った。いつものように善之助の家のちゃぶ台にはまだプルトップを開けたばかりの缶コーヒーが置いてあった。

「10日に裁判がある。そこの中で当然のように郷田の裁判が行われることになる」

 そのことは次郎吉から聞かないでも知っているという顔で、善之助は次郎吉の方に顔を向けた。

「その後、郷田雅和は保釈されると思うのであるが、その時に川上かまたは郷田の手下がウ3宝石を盗みに来るはずだ。当然にその時には、警備が強くなっているはずだから彼らはみな捕まる。それを待ってからでよいのではないか。」

「なるほど」

「そうでなきゃ、今度は我々が宝の扉を開けた時に、郷田や川上が来て、我々が苦労して見つけたものをすべて横取りされてしまうではないか」

 次郎吉はさも当然のことのように言った。実際その通りだ。そもそも、だいたいの宝探しの映画は、最後にそのようなどんでん返しがあり、そしてもう一度どんでん返しがあったハッピーエンドになるのであるが、まあ、現実の世界ではどんでん返しが二回続く確立などは低い。そう考えれば、確かに邪魔者をすべて排除してからゆっくりと宝箱を開ければよいのである。

「それに爺さん、今回は宝を掘り当てるだけではなく、東山資金ができてから今までの歴史をすべて紐解かなきゃならないのではないか」

「確かにそうだ。様々な疑問がどんどんとうまれてきたからな」

「宝箱を空けるのは、すべてが終わってからでよいような気がする」

 次郎吉は缶コーヒーをゆっくりと飲んだ。

次郎吉からすれば、次の展開が見えていたのである。いや、見えていたといえばおかしい。何が起きるかはわからないが、間違いなく鼠の国の人々は何かをやる。そのなにかということは、あまりにも大きなものでありそして、善之助などは全く想像もつかないような行為になることは間違いがなかった。具体的に何が起きるかはわからないが、10日の裁判の前後に何かが起きる。それは、もしかしたら善之助と次郎吉が出会った時のような、この町以来の大事故かもしれないのである。

「よし分かった。10日まで待とう」

「いや、爺さん。10日までの間に、この宝石をどのように使うかを調べなければならないだろう」

「確かにそうだ。まだ宝石が関係あるとしかわかっていない。その宝石をどうしたらよいか、では10日までに調べよう」

 善之助もその通りということになった。

言われてみれば、猫の置物のことしかわかっていない。「ハチ」「△」という猫。そしてその宝石を持てっていたのが郷田。「シロ」「丸」という猫の置物、この宝石を持っていたのが時田、そしてその後川上に譲られていた。そしてもう一つは「ムラ」「ヨン」と書かれた猫、そしてその宝石は小林が持っていた。

関係ありそうなのは、当時避難所として設置されていた八幡山・城山・平岳山・眉山・石切山だ。今まで「ハチ」が八幡山、「シロ」が城山、「ムラ」がなんだかわからなかった。それを調べている間に様々な事件に、そう、郷田がつかまったり、川上が反乱を起こしたりというような事件に巻き込まれたのである。

「まずはムラとヨンを解決しないといけないのだな。」

「ああ、爺さん、小林さんならば何かを知っているかもしれないし、警察に行けば何か資料があるかもしれないではないのかな。そういうことで爺さん何か調べてくれるとありがたいんだが」

「確かにそうだ。で、次郎吉はどうする」

「俺は、もう一度東山の家の地下にある洞窟に入って何か見に行ってみようと思う。あそこにに何か資料があるかもしれないからな。」

 簡単に言っているが、実際は東山家に、勝手に忍び込んで、その地下室に入り込みその奥の洞窟に行くということを言っているのである。そのうえそのようなことをしていることは、東山の家はないも知らない。本来は東山の家が中心であるはずなのに、その勧進に東山の子孫は何も知らないか、あるいは、数年前の洪水で死んだ芸術家東山正信がすべて握ったまま死んでしまっているのかもしれないのである。

「でも、そもそも東山の家が何か知っているということはないか」

「知っているならばあの地下室が洪水の時のまま散らかっているはずはないし、また、その奥の洞窟というか、地下の秘密基地に関しても何か知っているはずだと思う。」

「そうだな。東山の家のことも調べてみないといけないな」

 その日はそうやって別れた。

10日までの間に、あと何回打ち合わせができるのか、善之助は翌日に備えたのである。

宇田川源流

「毎日同じニュースばかり…」「正しい情報はどうやって探すのか」「情報の分析方法を知りたい」と思ったことはありませんか? 本ブログでは法科卒で元国会新聞社副編集長、作家・ジャーナリストの宇田川敬介が国内外の要人、政治家から著名人まで、ありとあらゆる人脈からの世界情勢、すなわち「確実な情報」から分析し、「情報の正しい読み方」を解説します。 正しい判断をするために、正しい情報を見極めたい方は必読です!

0コメント

  • 1000 / 1000